しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『うつくしい体』(作者:鹿島こたる)

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「この体に墨を入れるのだと思うとーー高揚感が襲ってくる」
駆け出しのタトゥーアーティスト・夕路(ゆうじ)の元に舞い込んだ一件の依頼。
それは、美術界の巨匠・泰泉(たいせん)の名画をミチルの体に彫るというもの。
泰泉が囲い育てた専属モデルのミチルは、顔、体、その存在自体がまるで
芸術品のように美しかった。美人ゆえの傲慢さを身に纏ったミチルだが、
浮世離れした環境で育った彼は純真無垢で、少年のような愛らしい一面も
持ち合わせていた。ミチルの白く艶めかしい体に墨を入れる瞬間、夕路は
自分の中で沸き起こる欲望の気配を感じた。
「外もナカも、彼に俺を刻み付けることができたらーー」

 

何かの美術書で見た、

竹内栖鳳(たけうちせいほう)」という有名な日本画家さんが描かれた

『班猫(はんびょう)』という作品。

日本で最も美しいと言われる猫の絵です。

柔らかな体の線や、ふわっと浮いたまだら模様、

甘えるような、

しかしどこか不安げで ”何見てんのよ…” みたいな目線を送る猫。

この『うつくしい体』で描かれるミチルの姿は、

まさにこの日本画の猫のようにしなやかでした。

 

とにかく鹿島こたる先生の絵が美しい!

特に目の綺麗さたるや、素晴らしく美しいです。

ミチルも然りですが、

夕路の目元にあるほくろ、なんと色っぽいことか。

作中に出てくる絵画もとても綺麗です。

 

ストーリーも絵と同様にとても繊細な物語でした。

薄いガラスのように白くて細くて脆くて、

少し触れただけですぐに熱が伝わるミチルの身体。

その身体にタトゥーを彫る夕路。

日本画の重鎮・花田泰泉からの依頼で、

ミチルの背中一面に泰泉の代表作である絵画を彫ることになった夕路。

一目見た時から、

得も言われぬ魅力を持つミチルに惹かれる夕路ですが、

仕事を完遂するため何とか冷静さを留めます。

 

花田泰泉の側で暮らすミチル。

先生の絵画のタトゥーを背中に入れるため、

日々、夕路の仕事場に通うようになったミチルは、

初めて外の世界を知ります。

花田泰泉以外の人物と深く関わったことがないミチルは、

夕路の優しい手つきや、時折見せる獣のような目に惹かれていきます。

もっと夕路を知りたい、もっと夕路と一緒にいたい。

そう思うようになったミチルは、

タトゥーの完成に不安を抱くようになります。

 

”これが出来上がれば夕路とはもう会えない…”

”あの優しい手つきで触れてはくれない…”

”もうあの目で僕だけを見つめてくれない…”

 

背中のタトゥーに爪を立てるミチル。

完成間近だったそれは、見るも無残な形と成り果て……。

 

このシーンは ”アッ…!” って声が出てしまったほど、

哀しいというか切ないというか、とにかく胸が苦しくなりました(T^T)

しかし、これによってミチルの本当の自分の人生がスタートします!

誰のためでもない、自分のために生きる人生が。

そして傍には夕路がいる。

どんどん外の世界を知り学習していくミチルに、

ハラハラドキドキの心配と共に、

色んな輩が近づいてくるのも心配な夕路です(^^)

 

総じて、とても良かった!

前半は花田泰泉の呪縛に取りつかれる2人が苦しかったりするんですが、

後半は未来に向かって進む2人の姿にグングン引き込まれていきました。

いや~いいモノ読んだなぁと、読後の満足感最高でした(^^)