しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『あした虹がでなくても』(作者:きはら記子)

    

ゲイバーで働くドラァグクィーン・ホイップこと千歳(ちとせ)は、
トークアプリで「不眠症のリーマン」に毎夜グチを話すのが日課
顔も知らない彼に淡い恋心を抱いていたが、
どうせ会うことはないと高をくくっていた。
しかし、店を探し出した「不眠症のリーマン」こと凌(しのぐ)が
突然ゲイバーを来訪。女装姿を笑われ、最悪な気持ちで追い返してしまう。
後日、真摯に謝ってくれた凌と相対して千歳は気づく。
彼を本気で欲しくなっている自分に…。
思いが募るほど女装以外の姿を見せるのが怖くなる千歳と、
頭でっかちで自分の気持ちに無自覚なノンケの凌。
未完成な2人が自分の殻を壊しながら惹かれ合う、両片思いラブ!

 

ゲイバーで働くホイップこと千歳くん。

夜はドラァグクィーンとしてステージに立ちます。

奇異な目で見られようとも怪訝な顔をされようとも、

自分の一番輝く姿で皆を絶対笑顔にしてやる!という気持ちで、

プライドと誇りを持ってステージに立っています。

この心意気からして拍手を送りたいほどの男前っぷりです。

 

だけど、ほんとはストレスだって溜まるし、

心折れそうにもなるし、ひ弱な気持ちにだってなる。

そんな時の唯一の慰めが「不眠症のリーマン」さんとの会話。

トークアプリで会話するだけの関係だけど、

彼の存在は、千歳くんのオアシスとなっていました。

そして、ちょっと好きになりかけていたんです。

楽しそうに話を聞いてくれる彼のことを。

ありのままの自分を受け入れてくれる彼のことを。

 

しかしある夜、

千歳くんがホイップとして働いているゲイバーに、

一人の男性が入ってきます。”俺、不眠症のリーマンです” と。

女装してカウンターに立つ千歳くんを見て、

”それにしてもすごい格好だなぁ~” と、さらりと言ってのけました。

ノンケの男が放つ言葉は、

いとも簡単に千歳くんのプライドと心を引き裂いたのです。

 

何も始まらないまま、

最悪な気持ちで失恋したと思っていた千歳くんですが、

不眠症のリーマン」こと凌さんは、

何度も千歳くんに会いに来ます。”謝りたい…” と。

そして ”君のことをもっと知りたいんだ” と。

 

会えば会うほど凌さんを好きになってく千歳くん。

それと同時に本当の自分の姿を見せることが怖くなるんです。

女装の仮面で隠した自分じゃなく、

「素の男の千歳」を見せることが。

会いたいんだけど、自分を見せるのが怖くて会えない。

けど会いたい。

 

もう~ここのところがね、ま~心に刺さる刺さる!

自分も「人にみっともない姿を見せてはならない」と思うタチで、

好きな人の前でなんて、

常にパーフェクトな自分を見せねばならん!と思っちゃうから、

ものすっっっごく疲れんの…。

また会いたいな、話したいなって思うけど、

しくじってはならん!って思う気持ちが強くてすごく気が張るんだよね。

永遠に失敗しない完璧な姿なんて見せ続けられるわけないのにね。

まったくひねくれた人間に育ったもんです(^^;

 

”女装した姿じゃなくて男の君を見たいんだ” と凌さんに言われたけれど、

千歳くんはやっぱり怖くて女装して会いに行くんです。

そしたら凌さんに、

”本当の君に会いたかったのに…、

まるで嘘をつかれているみたいだ!” って言われるんです。

そこで千歳くんは答えるんですね。

”俺はただあんたに好きになってほしかったんだよ” って、

泣きそうなほど素敵な笑顔を浮かべながら。

 

心が震えました(T^T)

姿は女の格好で偽ってるかもしれないけれど、

凌さんを好きな気持ちにこれっぽっちの嘘はない。

千歳くんはいつだってまっすぐに凌さんを見つめていたんです(T^T)

そんな千歳くんの健気な想いを、

後々になってようやく気づいた凌さんは平身低頭の平謝り…。

どんなに千歳くんを傷つけていたことだろう…と、

グジュグジュ泣きじゃくり(^^;

まったくもう~と世話を焼く千歳くんがやっぱり男前でした(^ω^)

 

千歳くんみたいに強くありたい!と思える作品でした。