会社員の宗一(そういち)は、うちに棲みついた大型わんこ・楽(がく)に日々
振り回されていた。楽はニートの上に、うるさくて家事力ゼロのどうしようも
ない奴。でも何か放っとけなくて、宗一はこの生活を心地よく感じ始めていた。
ところがある日楽に「宗ちゃんと結婚したいな」と爆弾発言される!
親に勘当されていた宗一は、誰かと家族になるなんて考えられず…。
珍しく泣きの作品が続きました。
田舎のばあちゃん出されると絶対泣きます(^^;
優しくてあったかいばあちゃんの登場で涙腺崩壊しました。
宗ちゃんに拒絶されたと落ち込む楽にばあちゃんが言うんです。
”誰かと同じじゃなくていいの”
”あなたにしかできないやりかたで大切な人を守りなさい” って。
背中さすさすして ”がんばりなさい” って。
うっ…うっ…ばあちゃん(T^T)
わたし、がんばる!(感動したら何でも自分に置き換える…^^;)
今作の主人公・宗一と楽は、
2人とも幼少期から家族の愛に飢えていました。
特に宗一は可哀想で、
よくできる弟の誠一の方に両親の愛情がいってしまって、
居場所がなくなった宗一には、
「家を出る」という選択肢しかなかった。
”家族なんていらない、独りが一番いい” と心に思う宗一。
一方、楽はお母さんの愛情をたっぷり受けて育ちました。
小さい頃から絵を描くのが大好きだった楽は、
時間を忘れて一心不乱にお絵描きに没頭。
”楽は絵が上手ね♪” と褒めてくれるお母さん。(大好き♪^^)
だけどお絵描きに夢中になりすぎる楽を、
お父さんは ”頭がおかしいんじゃないか?” と言い、
お母さんを責めたて追い詰め、
元々身体が弱かったお母さんはそのまま幼い楽を残して逝ってしまいました。
そんな寂しい2人が出会い、
楽が宗一の家に転がり込む形で同居生活早や半年。
耳もシッポも出ちゃってるワンコ系甘えん坊の楽は、
宗ちゃん好き好き♪のスペシウム光線出しまくり。
”宗ちゃんが居ないと寂しい”
”宗ちゃんとケッコンする!”
躊躇することなく宗一に想いをぶつけ、愛を欲する楽ですが、
宗一は誰かに愛されたことも欲しがられたこともないので、
楽のその言葉を信じきれない。
どうせ離れてくんだ、ずっと一緒なんてそんなの嘘だ。
変な期待をするべからず。傷つくのはもう嫌だ…。
そんな思いから宗一は楽に手痛いひと言を放ってしまいます。
”お前を見てるとイライラする”
楽の言う「好き♪」がなんだか軽くて、
どうせ他の人にも言ってるんだろうという嫉妬から出た言葉でした。
そうして、宗ちゃんに拒絶された楽は、
落ち込みながらばあちゃん家に帰ったのです。
お母さんの仏前に座り、
”また普通にできなかった…” と。
お絵描きばっかりで、周りの子と同じようにしなかったから
お母さんを不幸にしてしまったんだと思っている楽は、
またもや独りよがりに宗ちゃんに気持ちを押し付けてしまったと。
このままでは宗ちゃんまでも不幸にしてしまう。
だけど、宗ちゃんが好き!
気持ちのせめぎあいで悶々とする楽の前に突然ひょろっと現れた人影。
宗一でした。
ひどい言葉で楽を遠ざけてしまった宗一は寂しさに襲われていました。
家族に拒絶された時よりも強い寂しさと同時に、
楽を手放したくない!という強い想いに突き動かされて、
楽の元へ身体が動き出していました。
そして、
宗一もまた、楽のばあちゃんの優しさとあったかさに癒されるんです。
みんなと賑やかに食卓を囲みながら、
誰かの特別で居られることの嬉しさを初めて噛みしめる宗一です。
楽と宗一、これまでの寂しさが大きかった分、
2人で一緒に居ることの嬉しさや楽しさや鬱陶しさ(^^;なんかを
存分に噛みしめていくんだろうな~と2人の明るい未来が想像できて、
”ふふふ♪” と微笑みがこぼれた読了でした(^^)
そして、決めるならばですが、
この作品のMVPはばあちゃんだと思います。
ばあちゃんのシワが寄った笑顔とか撫でてくれる手とか、
全部がほんとにあったかかったから。
やっぱりばあちゃん最強です。