しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『例えば雨が降ったなら』(作者:カサイウカ)

   

久我(くが)は、共同経営者に金を持ち逃げされ、ビルの屋上に立っていた。
飛び降りる勇気も出ず空腹が先にたち、しかも死ぬ前に初恋の「男」に
会いたいと思いとどまった久我は、友人の探偵の協力もあり、初恋の男・
充(みつる)のもとへ。しかしそこは、地方の場末のストリップ劇場で…。

 

最近、同じ作家の二夜連続が続いておりますが、

本日も二夜連続のカサイウカ先生です。

今作は久々に ”はぁ~いいの読んだわ~” と、

読後の満足感をしっかり味わえた作品でした。

 

おじさんBLがお得意のカサイウカ先生の本領発揮!

まさに中年オヤジの脂が乗り切った、

中年ド真ん中!中年の星!の四十五歳拗らせ男たちの物語(^^)

薄汚れてクタびれた男の ”嬉し恥ずかし初恋話” を、

いったい誰が聞きたいかい?しかも相手は女じゃない。

が、しかし、

「あらすじを読むだけで判断するべからず」を今作で学びました。

実際読んでみましたら、

まぁなんとも切ないやら哀しいやら可愛いやらですよ。

2人とも四十五のいい大人なんですけど、

心は高校生のあの頃のまま、良くも悪くも成長してない。

というか、あの頃のまま先に進めない状態でした。

 

良い大学を出て良い会社に就職して可愛い嫁と結婚して…。

この先も順風満帆な人生を送るんだと思ってた久我達彦。

その後、脱サラして友人と会社を立ち上げるも、

軌道に乗ったところで友人が会社の金を持ち逃げして蒸発。

昼夜問わず資金繰りに追われた結果、会社は倒産。

妻も家も仕事もなにもかも失った現在、

ビルの屋上でかれこれ三時間、飛び降り準備中…。

死ぬ前に駅前のカツカレーを食べようと思ったら、

手持ちの金が123円だった…。(泣きそうになりました…T^T)

 

そして久我さんは人生を振り返るんです。

何か一つでも良い思い出はなかったか?と。

一回くらいこんなおっさんにもキラキラした思い出が…?

…あぁそうだ、半田充。俺の初恋。

雨宿りをした神社。

キラキラと輝く太陽が雲間から顔を出した雨上がりの空。

2人、そっと手を繋いで見上げたあの雨上がりの空。

後にも先にも男を好きになったのはひとりだけ…。

そうだ!充に会いに行こう!

 

場末のストリップ劇場「黄金座」で働く充を見つけた久我さん。

初恋相手の充に会いたいという気持ちもあったけど、

何より久我さんは充に謝りたかったんです。

高校生のあの頃、充には ”あいつホモらしいぜ” という噂がありました。

”あいつと神社にいたけどお前もホモじゃねぇのかー(笑)” と、

友達からからかわれた久我さんは、保身のために思わず、

”いくら綺麗な顔してても、充は男だからキモチワルイ” と言いました。

偶然、後ろにいた充の耳にもその声は届いていました。

それから2人は一切の関わりを持たぬまま離れていきました。

 

いい歳したおっさんがそんな昔のことを今更…と、

突然現れた久我さんを邪険に扱う充です。

だけど、”俺の一番良い思い出が充との初恋だから” と、

清々しい顔で微笑む久我さんを無下にはできませんでした。

無職・宿無しの久我さんを、

しばらく「黄金座」のスタッフとして雇うことに。

少しずつ2人の距離が近くなりそうかな?と思えた頃に、

トラブルが起きるんですね~。

どこぞからやってきたチンピラが、

「黄金座」で踊りを披露しているストリップ嬢に悪さをするんです。

腕っぷしの強い充は、

一瞬でそのチンピラたちをボッコボコにするんですが、

悪いことにそいつらヤクザと繋がっててボスにチクったんですね。

そしたら充が拉致られてヤクザの巣窟に連れてかれるんです。

当然痛めつけられるんですけど、またまた悪いことに、

そのボスは充のことを知っていて、

”「黄金座」を守りたいならお前の身体で奉仕しろ” と言うんです。

(映画のワンシーン観てるみたいな場面でした)

 

毎日仕事終わりにいそいそと出掛けていく充を

不信に思った久我さんは後をつけます。

そして、ヤクザに抱かれる充を目の当たりにします。

ヤクザのボスがニヤニヤ笑いながら言うんです。

”お前ら2人でヤッて見せてくれよ(笑)” と。

ゆっくりと近づく久我さんは、

”やめろやめろ俺なんか抱くな!” と哀しそうな顔をして叫ぶ充に

そっとキスをしてヤクザのボスさんに言いました。

”充を大事にしたいんです。どうか店から手を引いて下さい” と。

 

会社の金を持ち逃げした友人が捕まったとの知らせがあり、

地元に戻ることになった久我さん。

そっと充を抱きしめ ”ここに帰ってきてもいいか?” と聞きます。

”帰ってくるな…俺を選ぶな……” と肩を震わせつぶやく充は、

”ずっと忘れられなかった…!!” とようやく本心を明かしてくれました。

笑顔でぎゅっと充を抱きしめる久我さんです(^^)

 

書き下ろしの『約束』で、

一時のお別れをする2人が描かれています。

「黄金座」はオーナーの取り計らいで、

例のボスからの束縛はチャラになり一安心。

”俺も早くお前の元に帰るから” と、充と約束をする久我さん。

2人は結ばれることなく再び離れることに。

カサイウカ先生もあとがきで触れておられましたが、

BL的にはこっからじゃん!ってとこで終わってますと(^^;

本当にまさにこっからじゃん!って思うんですけど、

わたしはこの終わりがめちゃくちゃ最高だなと思いました!

余韻残しまくりだけど、

この切ないけれど再び2人が抱き合える未来を思い描けるラストが

とても心地よかったです(^^)

 

そしてちゃんと続編あるんですね~。

『例えば雪が融け合うように』

これまたね、この続編があるのを知らなかったんですね~。

またもや速攻ポチリましたよ(^^)

この続編で絶対結ばれているだろう2人を見るのが楽しみです♪