次に深手を負ったら、致死量か?終わりの来ない、恋がしたい。
相思相愛と信じて疑わなかった彼氏に突然フラれ、
ショックで無気力ぎみな加納(かのう)。
ひとりで生きるのは無理。でも、つかの間の恋をするなんて、もっと怖い。
なのに駅で助けてくれた高校生にはときめくし、
職場の店長にもグラついてきてしまう結末…。
ただ好きな人と、ずっと一緒にいたい。
それだけのことが、どうしてこんなにも難しいのだろう?
哲学者ニーチェの言葉に、
”読書とは 他人の自我にたえず耳を貸さねばならぬこと” というのがあります。
『3番線のカンパネルラ』を読んだら、
この言葉が不意に思い出されました。
まぁ、どの漫画にも小説にも当てはまる言葉ですが、
今回は、作者・京山あつき先生のというよりか、
この物語の主人公・加納さんの自己意識に、
常に耳を傾けて読んだ本でした。
彼氏にフラれ、超・ネガティブ思考に陥ってしまっている加納さん。
ひとりでいたくない…
でも簡単にヨロめくような愛はごめんだし…
オレは男だし…ゲイだし…あーあ…
盛大にネガティブな加納さんの心の声です(^^;
重くなった心がちょっと体をフラつかせた、早朝の駅の3番線ホームにて、
”ダメです!” と、腰に飛びついてきた男子高校生に抱き留められた加納さん。
どうやら自殺しようとしていると勘違いされてしまったようで…。
『銀河鉄道の夜』で、
いじめられっ子だったジョバンニを助けたカンパネルラのように、
その男子高校生は颯爽と現れ、加納さんを救ってくれたのです。
そして、そんな高校生ことカンパネルラに、
さっそくときめいちゃう加納さん。いとも簡単にヨロめく心(^^;
”別にいいじゃない!ネガティブながら毎日懸命に生きてる僕に、
高校生を愛でるぐらいの褒美をくれたっていいじゃない!”
盛大に開き直る加納さんの心の声がまたもや響き渡ります(^^;
失恋の傷が癒えぬまま、行きたくないなぁ…と思いながらも、
加納さんは毎朝通勤電車に乗ります。
例のカンパネルラと挨拶を交わしたり、ちょこちょこと会話したりして、
うはは♪と満面の笑みを浮かべて超ご機嫌になる加納さんの心は、
どうする?両想い?付き合う?(≧▽≦)です。
なのに、行きついた職場で、
ちょいちょい細かいことを注意してくる店長さんにイラっとくる加納さん。
でも、この店長さん、
なんでか知らんが、加納さんにジュースおごってくれたり、
飲みに誘ったり、一緒にメシ行こうって言ったりしてくる。
当然のごとく加納さんの心の声は、
好かれてるの…?
そんなに距離詰められたら心揺らぎますよ…。
またもや、いとも簡単に好きになっちゃう自分のバカ!店長のバカ!
慟哭が響きます(T0T)
助けてくれたカンパネルラを好きになろうと、
店長と職場恋愛しようと、結局またフラれる…。
僕の何がいけなかった?何が間違っていた?
自問自答を繰り返しても答えが出なくて、
ブラックホールのように心が闇に落ちていく。
魔物になりかけている加納さんの心。
ただ、いつまでも見つめあって手を握りあってずっと一緒にいたい。
いつかまた悲しいこともやってくるんだろうけども、
どうか一緒に闇夜を超えてとなりにいて。
もしも「生きる」が旅のようなものなら、
僕はゆっくりのんびり旅をしていけたらなと思うんです。
「銀河鉄道」に乗っているかのように宇宙空間を旅する加納さんの心。
まるでジェットコースターのように浮き沈む加納さんですが、
これはすべて、心の内で展開されています。
非常にやかましい心なのに、表面上は「無」なとこがすごいです。
加納さんはとてもセンシティブな心を持った人なんでしょうね。
自分がゲイだということも、
それに追い打ちをかけている要因のひとつになってる。
加納さんの行きつく終着駅が楽園であったらいいなと思いました。
これは漫画の中の世界観だけど、
リアルな現実世界も、とても生きにくい世の中になってる気がする。
現実逃避するわけじゃないけど、(いや、現実逃避か…^^;)
創造の世界でひたすら他人の色恋に耳を傾けてもいいじゃない!ニーチェさんよ!
リアル世界を各駅停車で進むわたしの特権じゃい!