居酒屋・初鶯(はつうぐいす)で働く犬飼斗真(いぬかいとうま)。
彼の恋する相手は、年上で調理担当の柳雪春(やなぎゆきはる)。
しかし、柳にはずっと心に秘めた相手がいた。自分のことを
見てほしくて、つい酔った柳に手を出してしまった犬飼。
彼の想う「あの人」の代わりになんてなれないことは分かって
いたのに…。報われない者同士の真っ直ぐな愛を描く。
今作は、
あんまり聞いたことない(?)作家さん・柵飛ヒツジ先生の
デビューコミックスにして唯一の単行本『犬と鶯』の感想です。
どうかな~と思って試し読みしましたら、
続きめっちゃ読みたい!という衝動にかられ買ってしまいました。
というのも、
数ページの試し読みに出てきたセリフに心掴まれたから。
料理店のオーナー藪島(やぶしま)さんに片想いする調理担当の柳さん。
そして、そんな柳さんに片想いするホール担当の斗真。
絵にかいたような一方通行の恋です。
オーナーを見つめながら、
優しく微笑む柳さんを見た斗真が発したセリフ、
”俺にあの顔を向けて欲しかった…” という言葉。
わかりみが深すぎて胸が締め付けられました(>_<)
彼らの一方通行の恋が、
どう成就するのかが無性に気になって衝動買いです(^^)
割と目鼻立ちのしっかりした絵を描かれる作家さんで、
攻めはクリクリお目目のかわいいワンコ系、
受けは寂しげな切れ長の目で、恋に消極的な年上系と、
非常に典型的なノーマルBLで、
可もなく不可もなくおもしろかったです。
斗真が ”俺にあの顔を向けて欲しかった…” という言葉を発したのは、
自分の好きな人が、
自分じゃない誰かを想っている姿を見るのが辛かったから。
なぜその優しい眼差しを向ける相手がオレじゃないのか。
柔らかく微笑むその笑みは決してオレに向けられない。
辛くて苦しくてしんどくなって、
斗真は柳さんに酷い言葉を投げてしまうんです。
”さっさと告って、さっさとフラれればいいんだ” と。
振られたからといって、
柳さんの目が斗真に向くわけはないんですけどね…。
しかし、
そんな黒い想いが湧き出る気持ちはわかるな~と思ったんです。
で、さらに斗真はそっからちょっと暴走しちゃって、
ムリヤリ柳さんを襲おうとしたんです。
ギリギリ理性が上回って、
取り返しのつかない事態はまぬがれましたが、
ちょっとギクシャクした関係になってしまって…。
お店を辞めようと考え始めた斗真でしたが、
”簡単に逃げ出して諦められるような軽い恋じゃない!” と思い直して、
ちゃんと正面から柳さんに気持ちを伝えることに。
そして斗真の正直な想いが徐々に柳さんの心に響いて…。
ウグイスが鳴く春になった頃、
木漏れ日の中、共に歩く2人の姿がありました(^^)
前編後編に分かれていましたが、
ページ数が少ないので若干、駆け足という感じでした。
もう少しゆっくり進んだら、
もっと良い感じになったかもなんて思ったり(^^)
しかしそれもそのはずで、
全182ページの中に、表題作の前編後編と、
他に短編2つも収録されているんです。
獣人と人間の恋を描いた『ニンゲンのお医者さん』と、
12年振りの再会恋を描いた『朱に交わって赤くなる』。
そりゃ急ぎ足にもなるわな(^^;
1つ1つそんなに悪くない物語だったので、
なんか惜しいなぁ~という感想でございます。
セリフ1つに惹かれて読みましたが、
たまにはそういうのも良いじゃない♪という1冊でした(^^)