7年付き合った彼氏に、置手紙一つでふられたピアノ教師の佑真(ゆうま)。
自暴自棄になり行きずりの男と身体を重ねた翌朝、母親が怪我をしたと
いう報せが入る。慌てて実家に帰ると、そこには見知らぬ男・伊吹(いぶき)
が!! 偶然、町で出会った母を気にかけてくれていたという彼は、なんと
ピアノ教室の生徒・舞花(まいか)の父親だった!! 介護士をしながら、男手
一つで娘を育てているらしい。数奇な巡りあわせに、佑真は伊吹のこと
を少しずつ意識するようになって…!? まるで隙間を埋め合うように惹かれ
合った男達とその家族の、いびつで美しい愛と再生の物語ーー。
上下巻モノの何が好きって、
表紙を並べると「一枚の画」になるところがとても良き!
紙媒体で持っていたならば、上下並べて置いておきたい!
とても綺麗で素敵な装丁です。
黒髪の佑真さんと茶髪の伊吹くんが抱き合う表紙となっていますが、
物語は2人の単なるラブストーリーではなくて、
”これは僕らが このカタチになるまでの
とても小さく普通で ありふれた物語”。
壮大な、2つの家族の幸せの物語が描かれていました。
さっそくのネタバレになりますのでご注意下さい<(_ _)>
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タイトルにもあるようにいびつなカタチをした2つの家族。
ピアノ教師をする佑真さんと離れて暮らすお母さんの1家族と、
介護士をしながら、
男手一つで小学2年生の舞花ちゃんを育てる伊吹くんの1家族。
この2つの家族、誰一人として血の繋がりがありません。
最初から最後まで、
舞花ちゃんと伊吹くんの親子関係に目が行きがちなんですが、
終盤の方で、佑真さんとお母さんも血縁関係がないことが
さらっと打ち明けられてまして、
えっ!?そうだったんだと思う感じです。
そんな何にも繋がらない4人が、
それはそれは綺麗な輪になるんです。
こんなに幸せで素敵な家族がいますかというぐらい、
優しくて柔らかいけれど、しっかり固く結ばれた家族になる。
決して ”いびつ” なんかじゃない。
「家族」って血の繋がりだけで成り立つものじゃないなと思える。
いかにその人を大事に想っているか大切に想っているか。
その想いが血を越えるんだなと。
高校生だった伊吹くんは、
重病のお母さんの入院費を稼ぐため、
いわゆる「ウリ」をしていました。
そしてお客さんとしてやってきたのが沢田誠二(さわだせいじ)さん。
伊吹くんの内情を知った誠二さんは、
給料を払うからと伊吹くんを雇い、
自分の身の回り&まだ乳飲み子の一人娘の世話をお願いしました。
この小さな赤ん坊が舞花ちゃん。
誠二さんは病気を患っていて、一人残す舞花ちゃんを心配し、
すでに母親の最期を看取っていた伊吹くんに、
”養子になってほしい” と頼みます。
舞花のこれからをお願いしたいと。
なので、伊吹くんと舞花ちゃんは親子ではなく兄妹。
しかし誰がどう見てもお父さんと娘である上に、
世間的にもそうした方が波風立たないし、
舞花ちゃんが成長していく上でも健全である。
そう思いながら、小学2年生になった舞花ちゃんと、
忙しくも楽しい日々を送る伊吹くんです。
一方、7年付き合った彼氏にフられ自暴自棄になっている佑真さん。
行きずりの男とセッ〇スしてぐったりお疲れモードのところに、
実家の母親がケガをしたとの知らせが。
急いで駆けつけたらば、
玄関の戸が開いており、見知らぬ靴が脱ぎ散らかっており、
そして、母親に覆いかぶさる大きな男の黒い影がっ!!!
バキンッ!!とほうきで男の背中をシバく佑真さんでしたが、
逆にその男に一本背負いを決められて返り討ちに!
万事休す!と思ったところへ、
”パパ、やめて!その人、ピアノの先生だよ!”
舞花ちゃんの声でシーンと静まった空間には、
驚いてベッドから起き上がるお母さんと、
畳みにねじ伏せられた佑真さんと、
その上に乗っかる伊吹くんがいました。
4人の出会い完了です(^^)
佑真さんのお母さんを、
”おばあちゃん” と呼び、懐く舞花ちゃん。
時折、様子を見に、
伊吹くんとおばあちゃん家にお邪魔していて、
それを空き巣だと間違えた佑真さんだったのです。
そして佑真さんはなんと、
舞花ちゃんが習っているピアノ教室の先生なのでした(^^)
このいびつな4人の出会いが、
後に感動と喜びをもたらす、大きな大きな幸せへと繋がるとは。
あっという間の上下巻で、とっても素敵な物語でした。
見多ほむろ先生、間違いなし!と確信した作品になりました。
素晴らしかったです。
4人それぞれのキャラ立ちが素晴らしくて、
1人1人ちゃんと個性が際立っていました。
自分の内に気持ちを閉じ込めがちな佑真さん。
ゲイであるということにもどこか後ろめたさを感じています。
徐々に伊吹くんに気持ちを寄せていくんですが、
どうしてもそれを素直に表に出せずにいます。
1人たくましく生きるおばあちゃん。
息子の手助けすら不要だ!と跳ねのけるぐらい元気。
孫のようにかわいい舞花ちゃんが来てくれることが元気の源だけど、
やっぱり1人は寂しくて…。
いびつな親子関係だと舞花ちゃんに知られることを怖がる伊吹くん。
この娘を幸せにしないといけない!誠二さんと約束したんだ!
1人で気を張る伊吹くんですが、
どうしても頑張り切れず、
時々、弱くてみっともない姿を舞花ちゃんに晒してしまいます。
こんなどうしようもない大人3人を、
くるっとまとめて面倒みてあげているのが舞花ちゃん!
こんなに素直でかわいい子、見たことないです。
自分そっちのけで、みんなが幸せになることを考えてるんです。
自分ファーストじゃなくて、みんなファーストなの。
だからでしょうか?
舞花ちゃんはすごく強いんです。
大切な人のために、
こんなにも強くなれる舞花ちゃんに終始脱帽でした(^^)
だ・か・らっ!!!!!
重ねてネタバレになりますが、
お嫁に行くのが早すぎるよーーー!!!!!(T^T)
大学卒業と同時に花嫁さんになるんです~舞花ちゃん。
もちろん大好きな人と結婚する幸せな門出なんですが、
伊吹くんと佑真さんをちゃんと2人で幸せにさせてあげるために、
お父さんからの卒業も決めたんです。
舞花ちゃんが結婚式の前に佑真さんにしたためた手紙が、
これまた泣かせるんだわ~~~~(T^T)
お父さんを幸せにするのはわたしじゃなくて佑真さんの役目。
だからいい加減、2人の時間を堂々と大事にしてください。
最後に4人の家族写真がパシャっと1枚。
”最高に幸せだよ” と言葉を添えて(*´ω`*)
おそらく、時々読みたくなる作品になると思います。
読むと必ず幸せな気持ちになれるから(^^)
幸せのカタチは人それぞれでいいんです♪