しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『ハッピー・オブ・ジ・エンド』(作者:おげれつたなか)

    

「おめでとう、生きてる」昼下がりのゴミ捨て場、見覚えのある男の声で
目が覚めた。空腹で金もない千紘(ちひろ)は新しい”家”探しに訪れた行きつけ
のバーでド好みの男・ケイトに目を奪われ声をかけると好感触。まさかの
ホテルに誘われ、いい雰囲気になったところで突然電マでボコボコに殴られ
たのが1日前ーー。全てを思い出すも、仲間を呼ぶケイトの様子を見て、
今度こそ殺されるかもしれないと思いつつ回収された先はアパートの一室。
ケイトの目的はある探し物で、自分が用無しだとわかるとあっさり「消えて」
と言い放たれるが帰る”家”もない千紘で…。

 

お久しぶりです、おげれつたなか先生作品。

なんと1年振り。

去年の10月に『エスケープ・ジャーニー』と

『錆びた夜でも恋は囁く』を読んでいました。

どちらも胸が痛くて苦しくて辛かったけど、

読み終わった後、すごい安堵感に包まれたのを思い出します。

 

表紙の緑色と物憂げで中性的な男性、

そして、CAPTCHAのようなタイトルロゴが目を引く

今作の『ハッピー・オブ・ジ・エンド』。

変わらず「胸痛」作品でありました。

おげれつたなか先生の作品って、

登場人物たちが鼻血出す頻度高くないですか。

しかも、殴られて出す鼻血だから見てて辛いし痛い…(>_<)

しかし、その痛さが「愛」という名で跳ね返ってきて、

読んでるこちらの胸をキュンと締め付ける。

わたしの中の「おげれつたなか先生あるある」です(^^)

 

早速、あるあるシーンから始まります。

鼻血を流してゴミ溜めの中で目を開ける千紘。

そして「おめでとう、生きてる」と声をかけるケイト。

何だ?何でこうなった?と記憶をたどる千紘は、

金もなく住む場所もなくなった夜に、バーでケイトを引っかけ、

あわよくばどうにかなんねぇかなとケイトとホテルへ行きました。

久しぶりに気持ちの良い夜を過ごせそうだと思ったら、

部屋にあった電マで思いっ切り頭を殴られ、

ケイトにゴミのように捨てられてしまった千紘だったのです。

 

出会いは最悪でしたが、2人は一緒に暮らし始めます。

その中でケイトの素性や千紘の生い立ちなど、

お互いのことを少しずつ知っていきます。

2人とも本当にしんどい生き方をしてて、

読んでてかなり心が重くなるんですが、

千紘やケイトのふとした笑みや身体の触れ合いに、

小休止じゃないけどホッとした気持ちになりました。

それがただの傷のなめ合いだったとしても、

その時だけは一人じゃないというか、

誰かが側に居る温かさみたいなものをお互い感じている気がして。

 

とにかく千紘もケイトもずーっとひとりぼっちだったんです。

それが寂しいという感情すらも忘れてしまうぐらい。

ある日千紘は、

ケイトからグリコのおまけみたいな首飾りをもらうんです。

プレゼントだって言って。

ただのおもちゃの首飾りなのに、

千紘はとってもうれしそうな顔をするんです。

”ダッセぇ” って言いながらも肌身離さずつけてる。

「つながり」なんていう大層なモンではないけど、

誰かから形ある物をもらうことがなかった千紘にとっては

それはそれは嬉しいことだったはず。

 

愛情に飢えるケイトも、

どれだけ冷たくあしらっても後をついてくる千紘に、

”お前と幸せになれるかもと期待してしまう自分がいる…” と、

涙しながら吐露します。

今まで「幸せ」なんて望むことすらしなかったのに、

千紘の隣に居たいと、ずっと側に居れたらと思うようになってた。

 

1巻ではこのお互いの気持ちが「愛」なのかはまだわからずです。

続編の2巻が出ているので、

そこでもう少し深く2人が分かり合えるのかなと期待しつつです。

まだ未読ですが、どうやら3巻へと続きそうな感じ!?

幸せだけでは終わらない「おげれつたなか先生あるある」は、

どうやらまだまだ続くようです(^^)

こりゃ、心が休まらんぞ~。