しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『ご主人さまとけだま』(作者:小石川あお)

 ご主人さまとけだま  ご主人さまとけだま

ひとり暮らしのサラリーマン・千草(ちぐさ)が子猫だと思って拾った
薄汚れた毛玉。綺麗にして、ご飯を食べさせ、あたためて寝た翌朝ー
部屋には白くて長い髪に着物、猫耳と尻尾が生えている見知らぬ青年
がいた。千草を「ご主人」と呼び、懸命に仕えようとする彼に「けだま」
と名付け、一緒に暮らすようになるが…。

 

先日の『堕天使』は悪魔が人間もどきになりましたが、

今作は「化け猫もどき」です。

それもかわいいかわいい子猫ちゃん(*´ω`*)

とても小さい子猫ちゃんなので、

自分ならば可愛すぎて握りつぶしてしまいそうな感じですが、

「ご主人」はそんなこといたしません。

大きな手で、やさしく、ふわっと拾い上げてくれました。

 

道端に落ちている石ころに、誰も見向きもしないように、

自販機の奥で小さく丸まる「それ」に誰も気づきません。

 

ぼくには名前なんてない

だれに望まれて生まれてきたわけでもない

だからきっと このまま

だれにも必要とされないまま…

 

”毛玉…、今あっためてやるからな”

ワシワシ、もぞもぞ、ふんふん、ガツガツ。

汚れを落とし、タオルでくるみ、ご飯をあげて。

真っ白な、ふわふわな、まるまるな、もふもふになって…。

 

”おはようございます、ご主人”

そう言って千草さんに声をかけたのは、

白い着物を着た、猫耳シッポの長い髪の青年。

”昨晩、命を助けていただいた「けだま」ですよ、ご主人”

”ご主人の恩に報いるため、

けだま、人の姿に変化できるようになりました!”

 

猫のもののけであるけだまは、

拾ってくれて、名前まで付けてくれたご主人に恩返しをするため、

千草さんの身の回りのお世話を始めます。

お弁当づくりから炊事、掃除、洗濯、庭のお手入れ。

”けだまはご主人のお役に立ちたいのです!”

人間に変化し、せっせと家事をこなすけだまです。

 

超~かわいいです♪(≧▽≦)

なんだ!?このかわいいのは!と、萌え死にそうになりました。

見てくれもね、まんまるでモフモフで、

そりゃもうムギュっとしたいほど愛しくなると同時に、

けだまのご主人を想う健気さに胸打たれました。

 

夕方に激しい雨が降り出して、

ご主人が濡れちゃいけない!と、

駅まで千草さんを迎えに行こうとするんです。

だけど、けだまはもののけと言えど猫ですので、

水に濡れるのが苦手なんです。

ぴしゃっ!と跳ねた雨粒が足やら体やらに当たるんだけど、

それでも一生懸命走って駅まで行くんです。

途中でコケて膝すりむいて犬に吠えられて。

傘さしてるんだけど、結局どろどろになっちゃって…。

それでも、

(”傘を届けたらご主人はきっと喜んでくださるのです”)

(”早く、ご主人に会いたい…”)

その想いで、ズブズブのまま駅でずーっと待ってるんです(T^T)

 

結局ご主人は傘を持っててね、

一足先に家に帰ってるんですけど、

いつも ”おかえりなさい♪” と、

トテトテやってくるけだまの出迎えがないもんだから探しに行くんです。

そしたら、駅で一人ポツンと待つけだまがいて…。

そりゃね、ぎゅっと抱きしめますよ。

健気すぎんだもん。

 

”みすぼらしい化け猫のけだまは、

ちっともご主人のお役に立てませんね…(;_;)”

しょんぼりするけだまに千草さんは言うんです。

”お前はみすぼらしくなんかない。ちゃんとかわいい!” って。

ご主人にそう言われて、

目の奥がツンとして、

胸の中がふわふわして嬉しくてキュンとして、

そしてなぜかちょっとくるしい。

この気持ちは何なのでしょう?そう思うけだまなのです(*´ω`*)

 

それからしばらくは穏やかで幸せな2人の時間が流れるのですが、

「その時」はゆっくりと迫ってきていました。

人間に変化する時間が段々と短くなってきていることに気づくけだまです。

人間になるとひどく疲れて足が痛くなって、

いつの間にかまぁるいけだまに戻って眠ってしまっているのです。

人間としてご主人と一緒にいる時が限られてきたことを知ります。

 

そんな時、千草さんは川に流されている子猫を見つけます。

とっさに助けに入った千草さんは深みに足を取られ溺れてしまいます。

なんとか自力で岸に上がった千草さんですが息をしていません!

そこに、ご主人を迎えに来たけだまが通りかかります。

ご主人に駆け寄り頬に触れると……ひんやりしています。

 

”ごしゅじん……ごしゅじん……”

けだまの呼びかけにも動かない千草さん…(T_T)

 

”みつけた。けだまがお役に立てること。みつけました”

千草さんの唇にふぅ~と息を吹き込みながらキスをするけだま。

”さようならご主人、どうか幸せに”

”けだまはご主人のことが大好きです…♪”

 

生まれて初めて、胸が熱くなるほど誇らしい気持ちになったけだまは、

”にゃ~~おぅ~” とひと鳴きして息絶えました…(T^T)

 

これを書きながらも涙が溢れて止まりません(T^T)

そんな予感はしてました。

あの日、ご主人に拾ってもらわなければ、

当に消えてなくなってしまっていたであろうけだま。

だけどご主人との楽し気な日々が描かれてて、

失敗とかいろいろするんだけど、

その度、口下手な千草さんが恩返しなんて必要ない!なんて言って。

けだまはご主人のお役に立ちたいのですー!ってやり取りがあって。

 

頼む、どうかこの穏やかな日々よ続いてくれ!と願いながら読んでました。

だけど、やっぱりこの時が来ちゃった…。

号泣につぐ号泣(T^T)

 

ご主人に息を吹き込んだ後、

ご主人の側にぽてんと転がってピクリとも動かないけだまを、

意識を取り戻した千草さんが半開きの目の端でその姿を捉えるんです。

”待ってくれ…”と。

”けだまのとこに帰らなきゃ…” と。

しかし、そのまま運ばれて行っちゃって…(T_T)

 

元気になって家に戻って来た千草さんの側に、

けだまはもう現れませんでした。

”おかえりなさい、ご主人♪” の声はもう響きません。

 

洗濯する。働く。ご飯を食べる。掃除する。

なんにもない時間だけが過ぎて行きます。

自販機の隙間をのぞく千草さん。

”いるわけないか…” と独り言ちながらフラフラ歩いていると、

若者に絡まれ、ボコられ、ゴミ置き場に放り出されてしまいます。

もうどうでもいい…と、そのまま寝入ってしまった千草さんの顔に、

はらりと長い髪がかかります。

目を開いた千草さんの前には白い着物を着た長い髪の青年が!

 

”帰って来てくれたのか!けだま” と、青年を抱きしめる千草さん。

あたふたするその青年は自分に関する記憶がまったくなく、

名前もわからず、なぜここに生きているのかもわからず、

自分が存在する意味を見出せずにいる青年でした。

”ただ毎日夢に見るあの人がぼくに生きる力をくれる”

あなたはその人によく似ています、そう言って涙を流す青年。

 

”お前は忘れていても大丈夫。俺が全部憶えてるから”

”また出会ってくれて、生きていてくれてありがとう”

千草さんにぎゅぅぅっと抱きしめられた青年は、

胸の奥のほうにある、

しろくてまぁるいふわふわしたところがきゅんとして、

どこかで耳がピンと動いて、

知ってる!この感覚、このぬくもり。

大好きだと想うこの気持ち!

恋心ひとつ持って、あなたのもとに落ちていきます!ヾ(≧▽≦)ノ

 

号泣、のち、幸福♪(TωT)

 

あの日、川でご主人に命を吹き込んで息絶えたけだまは、

もののけの神様から耳と尻尾を取られました。

神様曰く、

”化けそこなった捨て猫愛する人の命を救えたことで報われた。

だからもうもののけではなくなったんだ” と。

そう言って、

神様はけだまをただの人間にしてこの世界に戻しました。

なぜなら、

”あの人間(=千草さん)の幸せはこの子にしか叶えられそうにない。

想い合う2人ならきっと幸せになれるから” と(*´ω`*)

 

素敵でした~。ほんとに素敵な物語でした。

心が清らかになりました。

そして思いきり泣いたので、

気持ちまでスッキリして、まさに「心の浄化BL」でした(^^)

 

お読みの際には、お手元にティッシュのご用意お忘れなくです♪

 

 

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