路地裏で出会った、獣のように獰猛で美しい男。
やがて宥(ゆたか)がトレーナーを務めるジムに現われ、
ボクサーとしての圧倒的な才能を垣間見せた勁(けい)は、
「プロになりたい」とうそぶく。しかしそれは、未成年の
彼がジムの寮に転がり込むための口実に過ぎなかった。
「余計な口出しするなら、あんたの秘密をバラす」と脅し、
宥の身体を要求する勁。しかしその瞳は欲望に曇ることなく、
どこまでも澄んでいて…。ふたつの魂の邂逅と宿命の物語。
上・中・下巻、骨太の1冊!
それぞれの巻に副題がついています。
上巻、「白い獣の、聞こえぬ声の、見えない温度の」
中巻、「赤い桎梏の、約束の場所の、臨んだ十字架の」
下巻、「薄紅めく空の、潤びる螺旋の、光る岸辺の」
各巻の内容を匂わせている感じで、
これなんて読むの?と思ったりしつつ、
なかなかかっこいいサブタイトルがついております(^^)
中身がけっこうしんどい内容で、
上中下を何日かに分けてようやく読破できました。
読了直後は、
うわ~おもろかった~!という満足感に包まれたのと、
これを描き切る作者様の力強さに感服いたしました。
スゴいです!
ざっくりいうと、闇のち救済のストーリー。
主人公たちがハピエンを迎えるまでの間、
幾度の災難・困難・悲劇や別れがあって、
こじれにこじれて、
幸せになるのか、これ?と終始ハラハラドキドキ。
体に悪いくらい、なんか心臓痛くなった(^^;
しかしそれらを乗り越えての大ハッピーエンド!
まさに「夜明けの腐女子」どストライクの作品です。
分類するならば、
「光り」寄りの「夜明け」腐女子のわたくし。
今作のハッピーエンドまでの道のりは、
かなり苦しいものがありました。
先が気になるけど苦しくて読めん…と思うことが何度も(>_<)
しかし、
一ノ瀬ゆま先生の画力とストーリーが素晴らしくて、
苦しいけれど先を読まずにいられない!という、
なんとも矛盾の境地でページをめくっていました。
主人公、宥と勁の最初の出会いは最悪で、
ほぼ脅迫レ〇プから始まります。
ボクシングジムを経営する宥は、
周囲に自分がゲイであることを隠しています。
勁は宥にスカウトされ、
宥のジムに居候する形でボクシングを始めます。
そして、宥がゲイであることを見抜いた勁は、
”みんなには黙っててやるから抱かせろ” と宥に迫ります。
宥も拒めばよかったんだけど、
勁のボクシングのポテンシャルが半端ないことを肌で感じていて、
その才能を埋もれさせるのはもったいない、
勁を自分の手で育ててみたい!
という思いが捨てきれなくて、
脅迫レ〇プを受け入れるというか、
抗うことができなかった。
ボクシングを続ける代わりに、毎夜、勁に抱かれる宥。
歪んだ関係を続ける2人に、
勁の過去を知る闇のグループが絡んできます。
しかもその中に勁のお兄さんがいたりして。
勁の生い立ちは壮絶で家庭環境は劣悪でした。
勁は小学校に入る前からウリをさせられてて、
勁の父親もお兄さんもそれを知ってて、
お金稼ぎになるからむしろ大歓迎でやらせてた。
そんな日々を生きる勁が、
素直に真っ直ぐ育つはずもなく、
心に大きな闇を抱える人間になりました。
「人生はゲームだ」と。
勁の心の中に巣くう、
角をはやした善と悪の「ケイ」が、
キャッキャキャッキャと面白おかしく勁を操る。
カチャカチャコントローラーを動かしながら、
どうすればアウトにならず進めるか、
効率よいルートはどれか、
効果的な攻撃&防御方法は…etc
自分に絡んでくるヤツらはすべて名も無きモブキャラで、
どう叩いて、どう排除して、どう取り込むかを、
チャカチャカと心の中の「ケイ」が勁に指示を出す。
宥には ”セッ〇スで取り込め” という指令が下され、
結果、脅迫レ〇プという形に。
しかし、宥は、
勁がこれまで出会ったモブキャラとは
まったく違う人間だった。
想定外の反応を示す宥に、
勁の心はグラグラと揺れ始めるんです。
自分のことを想って涙を流す宥に、
勁はこれまで抱いたことのない感情を芽生えさせます。
”勁のことが好きだ…” と言う宥を見て、
心が熱くなる勁。
初めての感情に戸惑う勁ですが、
宥と一緒に居たい!
宥の側に寄り添いたい!と思うようになります。
あったかい宥のおかげで、
ようやく血の通った人間に近づいてきた勁だったのに、
お兄さんのいる闇のグループや、
宥のジムを貶めようとする人達に邪魔されて、
2人は引き裂かれてしまいます。
それによって、
穏やかになったかにみえた勁の心は、
一層の深い闇へと落ちていくことになるんです…。
勁はピュアすぎるゆえに、
どんな色にもすぐ染まっちゃうところがあって、
宥のことが好き!ってなったら、
宥のために自分が傷つくこともいとわないし、
何だったら自分の命だって簡単に捧げられる。
勁が持つ「無垢の強さ」が危なくて危うくて、
ほんっっっっとにドキドキの連続!
死んじゃったらどうしよう…、
こりゃもう死ぬんじゃ…という不安の連続!
これが上巻と中巻を越えて、
下巻の半分ぐらいまでずーっと続くので、
(良い意味で…)たまったもんじゃないです!(^^;
気を揉みまくりで心配しっぱなし!
だけど、ほんとによくできた作品で、
1本のドラマか映画でも観終わったかのような
感覚を味わえること請け合いです。
重厚なストーリーBLください!と言われれば、
確実におすすめしたい1冊です。
ぜひ、「gift」の世界へどっぷり浸って、
ラストの勁の笑顔を見届けていただきたいです(^^)
そして本編を読破した後は、
番外編の『Love gift』『log gift』で、
甘々な2人に癒されてください♪