しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『ここはやさしい庭』(作者:エンゾウ)

ここはやさしい庭  ここはやさしい庭  ここはやさしい庭

愛を知らず、家族も居場所もなかった男。
ヒモ同然の生活で、女絡みのリンチを受け、気づくと見知らぬ男に
介抱されていた。「兄ちゃんに心配かけるなよ、護(まもる)」。
薫(かおる)と名乗る男は、なぜか自分を死んでしまった弟の護だと
思い込んでいるらしい!?戸惑いつつも薫と過ごす優しい時間で初め
て自分の居場所のある安らぎを感じ、偽りの弟のまま薫のそばに
いることを決意して…。

 

マザーズ スピリット』で初めてエンゾウ作品に出会いまして、

良いラブをたくさん味わったと同時に、

クスっと笑えるコミカルさもあって、

時折、ウヘヘ♪と笑い声を出しながら楽しく読んだものです。

 

その流れで今作『ここはやさしい庭』にいきますと、

えっ!?同じ作家さんですか?と思うぐらい、

超~シリアス路線だったのでびっくりしました。

 

突然の弟の死で心が壊れてしまったお兄ちゃん・薫と、

愛を知らない孤独な男との身代わりラブといいましょうか。

暴行を受けて行き倒れているこの男を見つけた薫は、

”ここにいたのか。心配したぞ、護” と声をかけ、

ボロボロに傷ついた男を家に連れ帰り介抱します。

そして、”おかえり” と優しく抱きしめるんです。

 

翌朝、目を覚ました男は、

”おはよう” と言いながら朝ごはんを作る薫と目を合わせます。

 

”もう大丈夫なのか、護”

”あんまり無理するなよ、護”

”朝メシうまいだろ、護”

 

弟が死んだことを受け入れられず、俺を使って現実逃避。

目を逸らして、いい様に書き換えて、

俺の向こうに弟(護)を見ているこの男・薫。

狂ってる…可哀想なやつ…と思うのですが、

でも、それぐらい弟を愛して、

損得も対価もない純粋な愛を注ぐ薫を見て、

その愛情を自分も感じてみたいと思う男。

薫が注ぐ家族の愛というものを受けてみたいと。

そして男は ”おいしいよ、兄さん” と。

自分が薫の弟(護)になることを決めました。

 

始まりから病んでます、お兄さん。

護になったこの男も、

そんな薫を正すのではなく、そこに乗っかるというね。

共依存というのでしょうか。

偽兄弟を演じることで心の平穏を保とうとしている2人です。

 

途中で護を演じることがアホらしくなって、

家を飛び出す男なんですが、薫が一生懸命探すんですよ。

なりふり構ってられんって感じで必死になって探すの。

あやしすぎて警察に職質されるんだけど、

弟の特徴は?って聞かれて答えられないんですよ…。

護だけど護じゃないから。

こういうところで、

薫自身も本当は彼が護じゃないことを、

奥底では理解しているんだろうなと思ったりしました。

 

”だまってどこかへ行かないで…” と、

切なそうに懇願する薫を見て、

自分の向こうに弟を見ていても、

今、薫が求めているのは俺なんだと思うと、

どうしようもない嬉しさと喜びと愛を感じて、

心があったかくなる男なのです。

そしてこの心のあったかさが薫への「愛」だと気づくんです。

薫の愛を感じられるなら、俺は自分を捨てて護になる!

 

身代わりの愛に生きるのは辛いです(T_T)

心のどっかでは本当の自分を見て欲しいと思うから。

 

2人にハピエンの結末は訪れるのですか?と思いつつ読みましたが、

よかった、ちゃんと幸せな結末でございました。

薫自身がようやく弟の死を受け入れて、

これまで一緒に笑って泣いてケンカして、

ひとつ屋根の下いたのは弟の護ではなく「彼」だったと。

空っぽだった自分の心を埋めてくれたのは「彼」だったと気づいて、

ようやく本当の「彼」に心を向けるんです。

そこで初めて ”おまえの名前を知りたい!” と言うんですね。

”おまえを愛したいし、これからもずっと一緒にいたいから!” と。

 

そして、最後の最後でこの男の名前がわかります。

読んでても、

そういやこの男の名前知らんかったなと思いました。

ストーリー構成にちょっと感動を覚えた瞬間でした(^^)

 

エロはすべて後半に凝縮されております。

受けがお兄ちゃんの薫で、攻めが護(仮)。

受け攻め逆だという声もあるようですが、

わたしはこれでしっくりきましたな~。

シリアスですがとても優しい素敵な物語でした(^^)

 

 

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