大学に入ったばかりの颯真(そうま)は、映画研究会の上映会で、ある作品に心を
奪われる。監督をした智美(ともみ)が、今は映画を撮っていないと知り、颯真は
彼に、自分が監督する映画の撮影を担当してくれないかと声をかける。
酔っていた智美は、代償として颯真にセッ〇スを求めるが…!?
正直、初めて読んだ時、
主人公の颯真に激おこぷんぷん丸でした。
「恋は盲目」といいますが、
あまりにも見えてなさすぎて無性に腹が立ちました。
さぁ何か変わるかなと期待を込めて本日再読しましたが、
やはり颯真と哲っちゃんにおいては印象変わらず…(^^;
そして、
智美さんがやっぱ良い人だなという感想に落ち着きました(^^)
あらすじを読みますと、
”映画撮影してやるからセッ〇スさせろ” と言う智美さんが、
かなりの悪代官に見えますが、
実は一番優しさに溢れた人でした。
闇落ちしそうだった颯真を救い上げてくれた人です。
颯真がまたがって煽ってきたもんだから、
最初だけ欲情的にチ〇コ突っ込んじゃったんだけど(^^;、
最終的には颯真を溢れんばかりの愛で包み込んでくれました。
何者も寄せ付けず壁を作っていた颯真の心に風穴を開けてくれた。
友達や仲間を作ること。
楽しんで笑うこと。
人を好きになること。
そうしたら世界がキラキラ輝き出すこと。
そんな毎日を一緒に生きて行こう!と言ってくれました。
そんな智美さんが一番まともで一番実直なキャラでした。
諸悪の根源はやはり「颯真」ではないかと。
主人公を「悪」呼ばわり…(笑)
わたくしが思うには、
「颯真の弱さ」が招いた闇だったんじゃないかと。
その弱さに哲っちゃんがつけこんだ。
小さい頃から女顔だといじめられて友達が出来なかった颯真。
そのせいで心を閉ざし壁を作ってますます孤立して。
だけど颯真はそれでよかった。
側に哲っちゃんがいてくれさえしたらそれでよかった。
近所に住む年上の幼馴染である哲っちゃんだけが、
ひとりぼっちだった颯真に手を差し伸べてくれた。
側に居ていいよと言ってくれた。
そして哲っちゃんに恋して、執着して、
哲っちゃんしか見えなくなった颯真は、
哲っちゃんの見ている前で哲っちゃんの友人たちに輪姦されても、
”哲っちゃんの恋人になれるなら!”
”哲っちゃんが俺だけ見てくれるなら!” と、
抵抗もせず受け入れるんです。
颯真くん、あなたは弄ばれているのですよ。
あなたの恋しい哲っちゃんも、
あなたをオ〇ホ代わりに使っているだけなんだよ。
いい加減目を覚ませっ!と何度イラついたことか。
しかしわからないでもない。
一人で孤独を抱え込んでると、
ほんの1ミリの優しさでも五臓六腑に沁み渡る水のように、
”ああ~この人こそわたしの救世主様である” と思ってしまいがち。
たった一人の世界で膝を抱えて丸まっていた颯真に、
手を差し伸べてくれたあの日の哲っちゃんは、
超クズ男でも颯真にとってはメシアだったんでしょう。
それから智美さんと出会って一緒に過ごすうち、
颯真はだんだんと気づき始めるんです。
なんか違うと。
哲っちゃんに対する「好き」と智美さんに対する「好き」が違う。
キラキラ度が違う。
ドキドキ度が違う。
言う事を聞いたら付き合ってもらえるという
「見返りを求める好き」は本当の「好き」じゃない。
何にもなくても会いたいと思ったり、
もっと一緒に居たいと思ったりすること、
これが「好き」ってことなんだ!と。
ようやくです。颯真、ようやくお目覚めです。
”これまでずっとありがとう” と、
ようやく哲っちゃんにさよならを言えました。
なかなか歪んだ関係でしたが、
哲っちゃんからの卒業 ”congratulation!” です。
颯真は智美さんによって闇から救われ、
明るい未来に向かって出発しましたが、
Q:クズ男の哲っちゃんはどうなったでしょうか?
A:ブラックホールです。
けっこう可哀想なんですよ~。
颯真が去ってく悪夢を見るようになりました。
途中で汗かいてガバっと飛び起きちゃうんです。
ちゃんと眠れなくなっちゃった…。
実は執着&依存していたのは哲っちゃんの方でした。
颯真がいないとどうしようもなくなってた。
こいつは自分がどんなことをしても離れてかない、
どんな時でも側に居ると思って高を括ってた。
かなり大事な存在だと気づいた時には、
もうすでに颯真は自分から旅立ってた。
逃がした魚は非常に大きかったということか…(T_T)
そんな哲っちゃんの救済が、
スピンオフ『いのるみたいにひびかせて』で描かれています。
クズ男の哲っちゃんが誰にどんな風に救われ、
真っ当な人間になっていくのか見届けたいです。
哲っちゃんざまぁ~で終わるにはちょっと可哀想だから(^^;