しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『嫌い、大嫌い、愛してる。』(作者:ARUKU)

   

寂れた地方都市でつましく暮らす作業員の奏(かなで)。
東京から赴任してきたエリート所長の凍月(いでづき)。
対照的な二人の男が出会い、脅し脅されるうちに心と身体が深く
絡み合ってゆく。2か月後、奏が意識不明の重体で発見されるまで…。
ドクズ男と無垢男、本当の愛を知るのはどっち?

 

自分の奥深くに眠る潜在的な「悪」が目を覚ます時ありませんか?

例えば普段穏やかな人が、

車のハンドルを握るとオラオラ系に変わるとか。

真面目なサラリーマンが、

キレッキレのヲタ芸サイリウムダンス踊るとか。(悪ではないか…^^;)

なんにせよ表に出せない顔の一つや二つ、

誰もが隠し持っているのではないかと。

 

わたしにとっての悪の顔は「変態」です。

それもアブノーマルな方の。

病んでますか?と言われても仕方ないかもしれませんが、

ムリヤリ系&淫語責め…、好きです。

ここでしか言えない、

わたしの闇の変態欲求を満たしてくれたのが、

今作の『嫌い、大嫌い、愛してる。』です。

良い意味で、読んで後悔するぐらい衝撃的な作品です。

今回久しぶりに読み返しました。

やっぱり色々スゴかったです(^^;

ざっくり言うと、復讐劇が本物の愛に変わるという物語。

 

こんなにド下衆い人間がいるんですか!?

というぐらいのゲスの極み・凍月所長。

名は体を表すです。凍った月のように心が死んだ冷酷人間。

この凍月さんが新しい所長として、

奏くんが働く田舎町の小さな工場にやってくるんです。

そしてこの奏くん、

全人類の不幸をしょい込んだんですか?というぐらい薄幸の人。

貧乏でボロボロの家に難病の母親を抱え介護と生活に追われる日々。

どうしても母親の医療費や諸々の生活費が足りず、

凍月さんにお給料の前借りをお願いします。

”どうしても30万円足りないんです…” と。

すると凍月さんは、

”お前の処女を30万で買ってやる” と言いました。

(たった1回我慢すればいいんだから…)と条件を飲んだ奏くん。

しかし、これが地獄の始まりでした。

淫らに乱れる奏くんの姿をパシャッとカメラに捉えた凍月さん。

”これ、バラまかれたくなかったら明日も来い”

 

この日を境に凍月さんによる、

無理矢理&脅され&犯されの日々が始まります。

”肉壁がしっとりとせつなげに俺の指に吸いついてくるよ”

”君のかわいいピンク色の穴が俺のを根元まで飲みこんでるよ”

”俺に愛しぬかれて蜜壺だな” などなど、

官能小説バリの淫語責め。(好きです!)

 

家に帰っても病気のお母さんが居て、

会社に行ったら犯されて、

逃げ場がなくなった奏くんは「死」を考えます。

自傷の道具として凍月さんに自ら抱かれに行き、

いっそ心も身体も壊してくれと言わんばかりに、

”あんたのペ〇スのこと以外何も考えられないようにして!”

”俺のピンク色したやらしい穴を早く傷つけて汚して!”

”たくさん出して!俺も出されてイっちゃうから!” と、

涙ながらの淫語返し。(辛いけど好きです!)

 

最初は、奏くんを自分のモノにしたいという

支配欲に囚われていた凍月さんですが、

この時、

涙を流しながら自分を求めてくる奏くんを抱きしめながら、

どうしようもなく愛おしい感情に襲われます。

こいつを守ってやりたいと。

そんな凍月さんの変化に気づいた奏くんは

復讐を開始します。

”もっと惚れさせて惚れ抜かせて愛情植えつけてやって、

お前なしでは生きていけないとまで思わせて、

あいつの目の前で死んでやろう”

”生きて内蔵を引きずりだされるよりひどい激痛と悲嘆を

味わわせてやる”

あれだけ純粋無垢で孝行息子だった奏くんの

心の奥底にあった「悪」が目覚めました。

 

2人の想いが食い違う歪んだセッ〇スが繰り広げられる日々の中、

奏くんのお母さんが亡くなります。

1人になった奏くんを心配し、

足繁く奏くんの家を訪ねるようになった凍月さん。

そんな凍月さんに歪んだ愛を向ける人がもう1人。

凍月さんの嫁です。

形だけの政略結婚でできた嫁で、

後半までは顔すらまともに描かれてなかった嫁。

突然奏くんの前に現われ ”夫と別れてほしい” と迫ります。

”別れてくれないなら死ぬ” と言って、

崖から飛び降りようとした嫁を助けようとした奏くんが

断崖から落ちてしまいます。

運良く助けられましたが意識不明の重体…。

 

ここから2人の贖罪の逃避行が始まります。

意識の戻らない奏くんを連れて、

凍月さんは世間から逃げるように、

心中場所を探すかのように旅をします。

愛する君とどこまでも、行けるとこまで行ってみよう。

献身的に奏くんを介護する凍月さんですが、

やはりくじけそうになります。

ずーっと眠ったままで何も語らず動かない愛しい人。

なんて完璧な復讐劇なんだ…と涙します(T^T)

 

しかし、

抱きしめると微かに握りかえしてくる奏くんの指先に

わずかな希望を抱く凍月さんは、

海辺に立つ小さな家を購入し、

2人とワンコ1匹とで静かに暮らし始めます。

そんなある日の夜、

忍び込んだ強盗に運悪く出くわしてしまった凍月さんは

腹を刺されてしまいます(>_<)

床を這いつくばって、眠る奏くんの無事を確かめようと

血まみれの手を伸ばすとそこには、

ぱっちりと目を開けてこちらを見つめる奏くんが!

ようやく目覚めた奏くんに、

”おかえり” とキスをした凍月さん。

そこには、にっこりと微笑みを返す奏くんがいました。

 

”…というのが、君が寝ている間の俺の冒険譚さ♪”

野原で横になりながら、微笑む奏くんに話しかける凍月さん。

”そろそろリハビリに行く時間だけど、

もうあと5分こうしていよう♪” とまったりする2人と1匹。

 

死んでなかったー!助かってたー!(≧▽≦)

奏くんがちゃんと元気になっているのかはわかりませんが、

とりあえず2人とも死んでないのでハッピーエンドです(^^)

凍月さんの最初のドクズ顔と最後の菩薩顔の違いよ。

本当の愛を知った人間はこんなに優しくなるんですね。

濃い~全246ページ。

おいそれとちょこちょこ読めない作品ですが、

忘れた頃に読むと、また新鮮な「悪」に出会えます。

 

 

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