食い食われ、他者の命をよすが(縁)に生きる。
森で暮らす狐の九重(ここのえ)は、ある日、巣から落ちた鷹の赤児を
拾う。非常食にしようと持ち帰り、食い応えが出るまで餌を与える
ことにしたが、「とーさん」と呼び一心に慕ってくる子を食べること
ができず、九重は「よすが」という名を与え親になる覚悟を決めた。
成長したよすがはたびたび「俺を食べて。そうしたら九重のお腹で
ずっと一緒にいられる」と要求してくるが、九重はそんなよすがに
対し食欲とは違う”飢え”を感じるようになり…?
これまでの人外BLは、
「獣 × 人」という構図がほとんどでしたが、
今回は「狐 × 鷹」という異種族獣人BLです!
一番最初に感想しました、
中川カネ子先生の人外BL『オスワルド』は、
ライオンとヒョウという獣同士ではあるけれど、
同種族間なので、両者の ”相容れない感” というのは、
まったく感じませんでしたが、今作は、
「狐の九重」と「鷹のよすが」という異種族の2人が主人公。
同じ肉食動物といえど、姿形も違えば習性も違うという、
どこまで行っても相容れない者同士。
そして、この相容れない者同士が想い合ってしまうんです。
好きになってもどうにもならない。
番にもなれず、子も成せない。
だけどそれでもお互いの傍にいたい。
同じ姿でなくとも、子を成せなくとも、
この森で、”九重” と ”よすが” と一緒に生きていきたい!
そんな、異種族だけど愛し合う狐と鷹の物語。
と言っても、ミナヅキアキラ先生です。
とーっても綺麗な絵で擬人化されていますので、
異種族なんてまーったく問題なし!
なんの抵抗もなく読めましたし、またもや泣きましたから(^^)
後半の人外BL、ほぼ泣いてます(^^;
以前感想した『なかないひばり』でも書いていますが、
ミナヅキアキラ先生が描く「瞳」がめっちゃイイんですよ。
すごい綺麗でキラキラと輝いて澄んでいて。
汚れを知らない「瞳」と言いましょうか(^^)
その瞳が今作でも活きていました。
森に住む狐の九重は狩りの帰り道に、
巣から転げ落ちた鳥の子どもを拾います。
ピーピーと鳴くその鳥を、
”非常食にでもするか♪” と家に持ち帰った九重。
明けても暮れてもビービーと鳴きじゃくるその鳥に手を焼く九重は、
黙らせようと干し肉を与えました。
モックモックと美味しそうに食べるその子を見て、
”おまえ、いったい何の鳥だ?” と不思議に思う九重でしたが、
”食い応えのあるところまで大きくしてみるか♪” と、
肌身離さず「非常食」を持ち歩く日々が始まりました。
するとその非常食は、”とーたん♪” と言って、
大きな瞳で九重を見つめ、懐いてくるようになりました(^^)
”これなぁに?”
成長した小鳥に羽が生え始めました。
狐のとーさんに育てられた小鳥は自分も狐だと思っていたんです。
”とーさんと形が違う…おれはいったいなに?”
そんな小鳥に九重は告げました。
”お前は俺が拾った子で、……本当は鳥だ!” と。
最初は非常食にするつもりだったけど、今は違う。
”一緒にこの森で生きるんだ。
お前の名は ”よすが”。
おまえはこれからおれを縁(よすが)に生きるんだ!”
親になる覚悟を決めた渾身の九重のセリフで、
感動の第二部の始まりだ!と興奮の面持ちで読んでいたら、
”ここのえのためにおいしくそだってみせる!たのしみにしててっ♪” と、
すりすりと大好きな九重に頬ずりするよすがの姿が(^^;
九重の覚悟をまったく理解していないよすがが、
たまらなく可愛いシーンでした(^^)
しかしよすがは、
だんだん大きくなっていく自分が、
ただの鳥でないことに気づき始めるんですね。
そして、偶然森の中で同類に出会うんです。
大きな羽根を広げ獲物を狙う「鷹」と。
飛べもしない、番う相手もいないひなどりちゃん♪
そう言ってバカにされたよすがです。
自分が鷹だとわかったよすがは、
飛べないうんぬん以上に気がかりなことがあったんです。
それは ”九重と番えない” こと。
どんなに九重のことが好きでも、狐と鷹は種族が違う。
なんの繋がりも持てないことを知るんです。
森に住む動物たちの使命は、
親元から巣立ち、番を見つけ、子を成し、
自分の命と一族を森に残していくこと。
鷹の俺では九重を幸せにできないことを知ったんです…。
悲しみ苦しむよすがの姿を見て、
九重はよすがを放してやらなきゃいけないと思うんです。
鷹同士の繋がりを持たせてやらなきゃいけないと。
よすがの未来をちゃんと繋げてやらなきゃいけない。
だけど本心は……、ひとりは嫌なんだ。
誰かのために生きたいんだ。
よすがと一緒に、おまえのために生きたい。
しかし、よすがから、住み慣れた森から離れ、
一人雪道を彷徨い歩く九重。行くあてなどどこにもない…(T^T)
すると大きな羽で大空を羽ばたいてやって来たよすが。
”置いてかないでよ、九重” と。
同じ姿でなければ一緒に生きられない?
子を成せなければ番えない?
そんなこと十分にわかってるけど、それでも繋がりたい!
何も残せないけど、自分が生きるには九重が必要なんだ!
抱き合う2人に号泣…(T^T)
姿形が違っても、愛する気持ちに違いなし!(T0T)/
”おまえは俺の非常食だから、最期まで大事にとっておく”
ラストの九重のセリフが胸にきました。
”最期” ってとこがね、泣かせますよ。
本文には書いてないけど、
2人で並び歩く後ろ姿を見て、
”末永く幸せに暮らしましたとさ” って言葉が見えました。
おもしろかったです~。
この相容れない感が切なさを誘って非常に良かったです。
やっぱ良いですね、獣人BL。
モフモフを楽しめると同時にストーリーも良いですし、
清く泣けますし、エロもあるときゃダイナミックですし。
もう~すっかりハマりました(≧▽≦)
ということで、
本日、きりの良い10作目で「人外BL祭り」閉幕です★
吸血鬼とか鬼とか植物とか淫魔とか、
まだ読んでない人外BLが色々ありますので、
またおいおい感想していきたいなと思います♪
長らくお付き合いいただきましてありがとうございました~(^^)