しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『どうしても触れたくない』(作者:ヨネダコウ)

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「なんか変なコトしたくなるよ、お前…」
新しい職場に初めて出社した日、
嶋(しま)はエレベーターで二日酔いの男と一緒になる。
それが新しい上司・外川(とがわ)との出会いだった。
無遠慮で図々しいように見えて、気遣いを忘れない外川に惹かれる嶋だが、
傷ついた過去の経験から、一歩を踏み出せずにいる。
一方、忘れることのできない記憶を抱えながらも
外川は傷つくことを恐れず、嶋を思う心を隠さない。
好きだけど、素直になれない…。不器用な恋の行方は?

 

ヨネダコウ先生!ようやく順番がやって参りました!

切ない系BLを代表する本作、『どうしても触れたくない』。

身も心も震えるほど、心臓ぎゅっ!と鷲掴みされる作品です。

 

嶋くんのかわいさよ!愛おしさよ!

一人、壊れそうな心を抱える嶋くんを、

抱きしめて、守って、愛してあげたくなる外川さんの気持ち、痛いほどわかります。

前の会社でノンケの男に傷ついた過去を持っている嶋くんですから、

もうノンケに恋なんてしない!と思っているわけです。

だけど、外川さんに惹かれてしまった…。

”おまえ、俺の目見て喋んないよな…。俺が見てない時はよく見てんのにな…” と、

外川さんは嶋くんの気持ちを見抜いているような言葉を投げかけます。

そして、顔を赤らめる嶋くんにキスをして、変なコト……してしまいます。

それから、何度もセックスをする2人ですが、

嶋くんはその度に、もうやめよう最後にしようと思います。

本気で好きになる前に…。

 

外川さんは、同僚の小野田さんから、

”外川さんは、ゲイとのセックスがただ物珍しいだけで、そのうち飽きます…” と、

嶋くんが言っていたことを聞きます。

”尋常じゃないくらい可愛い……” と、

外川さんは嶋くんのことを完全に好きになってしまっている自分に気づきます。

人を好きになることに怯えている嶋くんをとても愛しく思っていること、

そして、出会えて良かったってことを嶋くんに伝えます。

 

いつも優しくて真っ直ぐに気持ちを伝えてくる外川さんに、

勝手に怯えて怖がって、自分の気持ちから逃げていた嶋くんは、

京都に転勤になってしまった外川さんに会いに向かいます。

そして、”捨てられたり飽きられたり心変わりされたりするのが怖い” と、

心の内にためていた不安を、外川さんにすべて打ち明けます。

 

嶋くんの思いの丈を静かに聞いていた外川さんが一言、

”嶋……俺のこと好きか?” と問います。

外川さんの胸に顔を埋めながら、

”はい…好きですっ……” と答える嶋くん。(T^T)

 

たった一言でいいんですよね。前置きとかいらない。

好きって気持ちだけで、優しくなれるし強くもなれる。

外川さんってすごくシンプルな人なんだと思いました。

怖いとか不安とか男同士とか、そんなことウダウダ考える前に、

大事なのは「好きか?」ってことで、

その他のことは追随してくる付属品みたいなもの。

いつか嶋くんが、素直に遠慮なく外川さんと向き合う日が来ますように。。。

 

ヨネダコウ先生、人気作家さんなのが納得です。

ストーリー性高し!

グイグイその世界観に入り込んでしまって、

しばらく、ポーーって魂引っこ抜かれたみたいになります(^^;

何度も読んでるのに、いつでも胸がぎゅんぎゅんします。


『リスタート』(作者:日高ショーコ)

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出会った頃は自分のほうがずっと上にいた筈なのに、
いつの間にか立場は逆転…。
売れないモデルの匡(ただし)は、事務所の後輩の超売れっ子・アキと、
一ヶ月前酔っていたとはいえ、体の関係を結ぶ。
それ以来、アキとはほとんど喋っていないことに次第に苛立つ匡だったが…。

 

また短編を買ってしまった……懲りないわたし(^^;

先日、あれほど ”短編じゃ物足りねぇ!”と豪語していたくせに。

日高ショーコ先生、2作品目も短編読んじまいました。。。

 

絵がすこぶる綺麗で素敵です!(表紙の綺麗さよ!)

男性陣の美しいこと美しいこと。

どの人みてもすら~っと背が高くて、足がすーっと長く伸びてて。

表題作は主人公がモデルだから余計に綺麗なんですね。

 

昔はただ待ってるだけで仕事が舞い込み、

周囲の人たちからもチヤホヤされていた匡も、

落ち目の一途をたどり、いまや事務所のお荷物と成り果てています。

代わりに台頭してきた超売れっ子モデルのアキは、匡の後輩であるとともに、

酔った勢いで体の関係を持ってしまった仲でもあります。

なので、もっと拗れた展開になるのかな?と思いきや、

早々に、序盤で2人のわだかまりが溶けて、あれよあれよと仲直りH。

2人で恋も仕事もがんばっていこうぜっ!的な、爽やかリレーションシップへと昇華。

 

これって、男同士だから成せる関係性ですよね。

女だったら、

嫉妬に狂って髪引っ掴んで引きずり倒して足蹴りの刑に処してるでしょ(笑)。

 

絵とお話がちゃんと比例してます。

綺麗な絵だからお話も汚れてないです。エロだってさらっとしてます。

しかしね、何度も言いますけど、わたしが変態仮面と化しつつありますのでね、

どーしても物足りなさが…(^^;

わたしの心が、もっとボディブローを寄こせと叫びたがっとります。


『知らない顔』(作者:日高ショーコ)

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バレー部の春山(はるやま)と、卓球部のエース・田辺(たなべ)は幼なじみ。
田辺の才能が開花するにつれ二人の距離はひろがり、
今では互いに素知らぬ顔で過ごしている。
感情を吐露できないままの学生時代を経て、
社会人となった二人は再会するが…!? ひりつく恋の痛みを描く。

 

うーん……なんか、なんか、物足りん…(-"-)

全部のお話が、スーっと頭の上をすり抜けて、通り過ぎていきました。

短編集だからかな?

『知らない顔』『見えない顔』『消えない顔』『初恋のひと』『二度目の恋』

『運命のひと』『運命の恋人』『灰色の海』と、短編てんこ盛りです。

 

『知らない顔』『見えない顔』『消えない顔』が連作で、

メインディッシュ的位置づけ。

春山と田辺、幼なじみ同士の高校~社会人を経た恋。

小さい時から春山の後ろを追いかけていた田辺。

卓球も春山が始めたから、その後を追って一緒にやり始めた。

だけど、段々と田辺の方が卓球の実力をつけ始め、

嫉妬にも似た感情を抱いた春山は卓球を辞め、次第に田辺とも距離を置くようになる。

お互いに無視を決め込むけど、部室で抜きあいはしちゃう(^^;

 

社会人になって再会する2人。

ギクシャクしながらもホテルで抜きあいはしちゃう(^^;

高校の頃も社会人になった今も、

田辺に置いて行かれたような気持ちを抱いて、一人拗ねちゃってた春山は、

田辺が今でも、少しもブレずに自分のことを想っていることに気づいて、

ようやく素直になる。

で、抜きあいの続きしようぜってことになって、何年越しかで2人結ばれました。

 

その他の短編もおもしろかったですが、あまり心に残らない感じ。

ふむ、消化不良感が否めませぬ…(-"-)

次いこう!次!


『獣欲に恋して』(作者:くれの又秋)

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強面無口で喧嘩上等の高校生・浅野十蔵(あさのじゅうぞう)が恋をした。
お相手は、同高三年生のちょっぴり天然な先輩・橘兼久(たちばなかねひさ)。
恋する十蔵は、弓道部の兼久の元に足繫く通っては、
凛々しい袴姿をオカズに淡々とエロ妄想に励んでいた。
そんな矢先、急に兼久に避けられるようになって…?

 

くれの又秋先生、初読み作品です。

買って1回読んだきり、あんまりだな~と思って、その後読んでいませんでした。

感想書くにあたって再び読み返したところ…。

ええやん……めっちゃええやんっ!ってなりました。(^^;

なんかかわいいし、なんかキュンキュンするし、なんか良かったです!

 

強面で無愛想で一切笑わない浅野十蔵。

ケンカの最中、背後から襲われそうになった十蔵を助けてくれた先輩・兼久に、

”どキュン!!!” と一目惚れ。それから、十蔵は兼久のストーキングを開始!

いついかなる時も、兼久を組み敷いて押し倒し、めちゃくちゃに犯して泣かせて…と、

えろい妄想を膨らませる十蔵。

一方の兼久は、懐いてくる十蔵が優しい笑みを向けてくることにドキドキして、

変に緊張してしまっている自分に戸惑う。

困惑する兼久だけど、無愛想ながらも真っ直ぐに気持ちを伝えてくる十蔵に、

やはり惚れているんだと納得する。

十蔵のえろい妄想以上に、Hの時、意外と兼久がマウントポジションだったから、

積極的で良いねぇ~と思いました(^^)

 

この表題作のほかに、「ひしかくし」という作品も収録されています。

わたしはこちらの方がお気に入り!

「ひしかくし」=「秘し隠し」という漢字で、秘密にしてひた隠すという意味。

これを知ってから読むと、ものすっごく胸がぎゅーーん!とします。

 

小学校からの付き合いのミネと恭一。

ミネは恭一のことが好きなんだけど、

その気持ちはず~っとずっとひた隠しにしています。

それを表わすかのように、

ミネは前髪を切らずに伸ばしています。前、見えてる?と聞かれるくらい。

ある日、酔ったミネを介抱していた恭一が、ふいにミネにキスをします。

彼女と間違えたという恭一ですが、ミネの心臓はズキンズキン。

ひた隠しにしている気持ちがこぼれ落ちそうになります。

これ以上は一緒にいられないと思い、恭一を避けるミネ。

だけど、恭一はそんなミネの想いを昔から全部お見通しだったんです。

ジュースを回し飲みしただけで、すぐ顔が赤くなるとこ。

好きなものを目で追うクセがあるとこ。

隠した前髪の下から、いつも熱い視線を送っていたこと。

全部、恭一に見抜かれていたミネは、キモくてごめん……と謝ります(T^T)

震えるミネに歩み寄る恭一は、バッサリとミネの前髪を切り落とします。

”ちゃんと目を見て、おまえの本心を聞きたい” と。

素直に気持ちを伝えるミネを愛おしそうに見つめる恭一。(よかったよぉ~T^T)

その後のラブホHがすんごい良かった。

 

やっぱり読み返すって大事ですね。

1回ではわからない良き所を気づかせてくれます。


『ブルーノート』(作者:束原さき)

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【恋なんて、もうできないと思っていたーー。】
ある出来事からピアニストの夢を諦めかけ、
バイトと身体を売ることで生計を立てている奏(かなで)。
ある日、ラウンジプレイヤーの仕事で、謎の男・戈木(さいき)と出会う。
ピアノの腕を素直に褒める彼に、
奏では過去のトラウマと重ねながらもほのかな恋心を抱く。
誘われるがままについて行った戈木の部屋で、
「俺の専属ピアニストにならないか」と提案され…!?

 

表紙が綺麗ですね~。素敵です。

中身もそれはそれは綺麗です。

だって、主人公がピアニストですもの。ストイックで高貴なイメージです。

 

奏はピアニストで、見目麗しい儚げな美少年なんですが、

副業で、なんと!…身体売ってます。

ピアノを弾き続けたいけど貧乏でお金がない…、ので身体売ります!的な。

いや、いいんだけどさ、いいんですけどもさ、

身体売る以外でお金稼ぐ方法はなかったですかい?

楽しくて身体売ってるんならいいけども、読む限りではそうでもなさそうで、

”ピアノ弾いてるから手を縛らないでほしい…” って、

その日の相手の男に言ってたりするし。

 

ある日、眉目秀麗な社長・戈木さんが、

奏のピアノの腕前と奏自身を見初めて、パトロンに名乗り出ます。

しかし、身体を売っているという後ろめたい行いと、

ピアニストとしての能力にも自信を失いかけていた奏は、その申し出を断ります。

が、戈木さん自身に惹かれ始めている自分がいて…。

 

昔、とあるBARで楽しそうにジャズを弾いていた男に、心を救われた過去がある奏。

実はそのジャズピアニストが戈木さんであり、奏がずっと探し求めていた人でした。

戈木さんのように自由に自分のピアノを弾きたい、自分の音を奏でたいと思う、奏。

そして、それが出来た時、戈木さんの恋人として傍においてほしいと伝えます。

その後、戈木さんが主宰する船上パーティで、色んなことを払拭した奏は、

大勢の人の前で初めて自分のピアノを楽しく弾くことができました。

戈木さんともいい感じになれて、良きかな良きかなというお話。

 

全体的に、最初に言った通りたいへん綺麗な作品です。

悪い人出てきませんし、乱暴なプレイなんてありません。

ただただ綺麗なピアニストお2人が、時に切なく、

そして楽しげにピアノを奏でております。

ちょっとピアノの上でHしちゃいますけど、そのHも非常~にきれいです。

たまにはね、こんなキレイな作品も読まないとです。

 

でもね、やっぱ心が薄汚れはじめてるんですね、きっと。

ちょっと物足りない気がするんです。

もっとがっつり来いよ!って思ったりしちゃうんですよね(笑)