17歳で彗星のごとく文壇デビューした水上(みなかみ)は直後、筆を折る。
秘められた真実—受賞作は盗作だったのだ。
やがて営業マンとなった水上は、同期の地味総務・加久田(かくた)に
「大ファン」だと告げられる。
何も知らず、無邪気ともいえる加久田の賛辞。
水上は自分の忌まわしい過去を愛する加久田に何の因果か惹かれてしまい、
肉体を要求していくが…。
2人のサラリーマンに降り注ぐ繊細で残酷で美しすぎるラブストーリー。
ここのつヒロ先生の絵が気に入りすぎて、
作家買いしてしまった第3作目「花降るふたり」。
今作も眼福、眼福♪
表紙の2人を見るだけで目が癒されます。
この作品が一番、胸がきゅっとなる物語でした。
物語の背景が春の桜の季節だったので、なんだか物悲しくなりました。
サラリーマンの水上は、10代の頃に出したデビュー小説が賞を取り、
今後が期待される作家となるはずでした。
しかし、これは水上にとって記憶から消し去りたい過去の遺物となっていました。
過去の物にするつもりでした、加久田が現れるまでは。
水上と同期の加久田は、水上がその作家であることをしっており、
賞を取った小説を持ち歩くほどのファンであることも判明。
自分の消し去りたい過去に執着する加久田に、
”あの小説は盗作だ” と告げる水上は、
”その真相をもっと知りたいなら、お前の身体を差し出せ” と言います。
そうすることで加久田が自分を見限ってくれれば良いと思っていたのです。
しかし、加久田は過去の水上だけでなく、
現在の水上をも優しく包んでくれました。
そんな加久田を愛し始めていることに気づいた水上は、
”お前の特別になりたい” と、加久田に告げます。
そして、”出会う前も、出会った後も、ずっと君は俺の特別な人だ” と、
答える加久田。
花降る下で、笑顔でキスを交わす2人。
水上が盗作したという小説は、
実は、水上のお兄さんがボツにして捨てた小説に、
水上が手を加えて完結させたものでした。
それが賞を取ってしまったがために、
お兄さんとギクシャクしてしまっていた水上ですが、
現在、ミステリー作家として大活躍するお兄さんが出した新刊本、
『春の汀にまどろむ』の中の一文で、物語の最後が締めくくられています。
「私は願う お前の頭上にたくさんの花が降り注いでいることを」
これぞ ”良い終わり” ってやつだなと思いました。
ふふ♪と、自然と笑顔で読み終えるエンディング。素敵でした(^^)
タイトルにもあるように、
花降るシーンがとても印象的に描かれていました。
一枚の花びらから心情が読み取れるシーンもあって良かったです。
ストーリーもエロも両方存分に楽しみたいわたしにとっては、
ここのつヒロ先生、良い方に出会いました。