しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『傘を持て』(作者:たうみまゆ)

 傘を持て   傘を持て

ヤクザの組長の家に生まれたことに悩み、荒れていた高校時代。
そんな城田(しろた)を救ったのは同じクラスの優等生・畑中(はたなか)
のひと言だった。その後、一流大学に進学した畑中と組に入った城田
だったが、なぜか畑中は城田のとの関係を切ろうとはせず、キスを
交換条件に仕事を手伝うように。輝かしい未来が約束された男が、
なぜ自分のような人間に固執するのか…。しかも、大学を卒業した
畑中は、城田を追って組に入り…。

 

タイトルだけ見たら、お話がどんなか想像できない感じですが、

表紙パッと見で人となりがなんとなくわかります。

傘を差しかけられている城田さんは、

ジャケットがはだけてヨレヨレで、

シャツ出ててズボンがダレっとしてて、

ちゃんとした感じには見えません(^^;

傘を差しかけている畑中さんは、

ビシッと黒スーツを着て、キュっとネクタイを締め、

オシャレなポケットチーフをINしたメガネ好青年。

いかにも ”私できます” 風。

 

高校のクラスメイトだった2人。

親がヤクザの城田くんは、

クラスのみんなから疎外されていて、

一匹狼というかぼっちというか邪魔者扱いで、

一方の畑中くんは、

クラス委員で優等生で、もちろん頭すこぶる良し。

当時、なんの接点もなかったはずの2人は、

今現在、同じヤクザ世界に生きています。

 

というのも、高校生だったあの日、

土砂降りの雨に打たれながら、

一人涙を流す城田くんの姿を見た畑中くんは、

父親に殴られ、身体中痣だらけの城田くんに言いました。

”君はヤクザに向いてない” と。

父親の後を継ぐべく、

なんとかヤクザを、ワルを、クズを演じようとするけれど、

どうしても演じきれない自分がいる…!

そう気持ちを吐露する城田くんに ”君は弱い” と。

 

そして、

”僕は限界まで演じてみせるよ。皆が求めている優等生を。

人生なんて壮大な演劇だろ?” と言ってのける畑中くん。

人生を達観してる人みたいな言葉です(^^;

 

なんか表紙の見てくれとは真逆ですよね。

ヤクザ辞めたいと泣く、弱虫・城田くんと、

人生演じてなんぼでしょの強気・畑中くん。

 

じゃあ、この先もっと頑張って、

父親が、皆が、求めるヤクザを演じて…。

でも、それでも限界がきてしまったらどうすればいい?

と聞く城田くんに、

”そのときは2人で逃げようどこか遠くへ”

と告げた畑中くん。

 

この約束、ちゃんと守られるんです。

 

高校を卒業して進路が分かれた2人。

畑中くんは大学進学。城田くんはもちろんヤクザの世界へ。

しかし2人の縁は切れていなくて、

城田くんのシノギの相談役として、

頭のキレる畑中くんのお知恵拝借みたいな感じで、

相談にのってもらったりしていました。

そして大学を卒業した畑中くんは、

なんと城田くんの組に鳴り物入りでやって来て、

あれよあれよとキレキレ頭の才能開花で出世。

現在は「若」と呼ばれている城田くんの右腕です。

 

畑中くんが付かず離れず自分の側にいてくれることを

うれしいと思う城田くんですが、しかし、

この世界にいるべき人間ではないとも思っていて、

いずれ縁を切らねばならないと思い、

汚れ仕事をさせてはならない、

完全にこちら側に堕としてはならないと、

線引きをしようとするのですが、

如何せん頭のキレる畑中くんに全部バレバレで…(^^;

 

”城田が居る場所が、俺の生きる世界なんだ!”

そう言ってくれた畑中くんの言葉が、

涙が出るほどうれしくて、

城田くんはついに終わりを宣言しました。

”畑中、俺もう「ヤクザ役」限界!”

 

その言葉、待ってました!と言わんばかりに、

畑中くんは駆け落ちの準備に入ります。

ただ単に、

城田くんの側に付き従っていた畑中くんではありません。

ヤクザのシノギをしながらも、

いずれ来るこの逃避行のためのマネーを、

着々とロンダリングしていたんです(^^)

 

高校生の時に城田くんと交わした約束、

”そのときは2人で逃げようどこか遠くへ”

15年も待ちに待ったそのときが今!ようやく!(≧▽≦)ノ

 

読み終わって感じたのは、

まったくブレない畑中くんが男前だなということと、

城田くんと生きるためならどんな汚れ仕事もやっちゃうよという、

ある意味ヤクザな生き方してたなということ。

頭もかなりキレるから、

そのままいってたら多分、組織の良いポジションまで

登りつめてたんじゃないかなと思ったりしました(^^)

 

あと、物語の最後に城田くんが

2人で逃げるっていうこんな単純なことに、

15年もかかったんだな、みたいなことをぼそっと言うんですが、

その言葉を受けて畑中くんが、

”「単純」が「簡単」にできれば、

きっと誰も泣いたりなんかしないよ” と言うんです。

 

さらっと名言言いよるなと思って。

いつも雨にまぎれて泣いていた城田くんの事を想ってのこの言葉に、

なんか、めっちゃ、シビれました(T^T)

 

逃避行後を描いた番外編にて、

2人が結ばれるシーンが描かれております♪

ハワイに行きたいと言っていた城田くんの願いは

聞き届けられるのか?2人の最終的な安住の地は?(^^)

 

さらにスピンオフの番外編。

城田くんと畑中くんの逃避行を手助けした重要人物・金本さん。

今度は、

金本さんとその子分の鈴木くんの逃避行が描かれています。

 

さらにさらにもう一つ別の短編『真面目長屋』。

お隣に引っ越してきた訳あり男2人。

どうやら、

組長のご子息をかっさらって逃避行をしているという、

ヤクザの若様とその子分・八神。

想い合う2人は彼らを執拗に追う輩たちから、

今日も今日とて逃げ回る!?

 

丸々1冊ヤクザ本ですが、

どれもヤクザ世界からの逃避行を描いているというのが、

一風変わっておもしろかったです。

しがらみに縛られず自由に生きようとする、

彼らそれぞれの物語が非常によかったです(^^)

 

 

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