しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『リスタートはただいまのあとで』(作者:ココミ)

   

何もない片田舎で生まれ育ち、高校入学を機に上京した充臣(みつおみ)は、
会社をクビに実に10年ぶりに帰郷した。昔と何一つ変わらない田舎町。
しかし、昔と違っていたのは、近所のじいちゃんの家に養子として迎え
られた同い年の大和(やまと)との出会いだった。会社を立て続けにクビになり、
どこか素直になれない光臣と優しく人当たりのいい方言男子・大和の
ほっこり田舎BL!

 

先日の「田舎のばあちゃんあったか系」に引き続きまして、

「田舎の人々あったか系」です(^^)

普通に淡々と過ぎる毎日が描かれていて、

これといったドラマティックな展開も、

ドキドキするようなシーンもありません。

だけど、じわ~っと胸が暖かくなって心がほっこりとする。

そんな優しくて愛おしくなる物語。

 

普通の淡々とした日々と言いましたが、

生い立ちが全然普通じゃない大和。

生まれてすぐに公園のベンチに捨てられていて、

役所の人に発見されてからずっと施設で育ちました。

そして高校生の時に、農家を営むじーちゃんの養子となり、

現在は、農家の跡取り息子としてじーちゃんの畑を手伝っています。

一方、”オラ、こんな村いやだ~!”

と、そんなド田舎を飛び出して東京に働きに出たものの、

まもなく会社をクビになり、そんなド田舎に舞い戻って来た光臣。

現在は、両親が営む仏具店を継がせてほしいと直談判中。

そんな2人のじんわりゆっくりな恋物語(^^)

 

なんとなく、持ちつ持たれつな2人という感じ。

足りないところを補い合ってるような。

何をするにもいつもぶつぶつ文句を言う光臣を、

いつも穏やかニコニコ笑顔の大和が ”まぁまぁ~” ってなだめる。

自分は捨てられた可哀想な子どもだと思われたくないがために、

怒らず騒がず人当たりの良い自分を作り上げてきた大和。

本当はどこか寂しくて、一人になるのが怖いのに

それをニコニコ笑顔で取り繕ってる。

そんな大和の不安な心を ”大丈夫だ” と言うように、

隣でそっと手を握り見守る光臣。

 

特別何も言わなくても、すでに心はとっても近い2人。

手を握ったりはするけれど、

抱き締め合ったりキスしたり…なんてことはしてない。

だけどそうしたいと思っているこの気持ちに、

ドキドキとソワソワを感じてしまってる。

それを先に行動に移したのは光臣でした。

寝ている大和の頬にそっとキスをしたんです。

ここにちょっと意外だったなという感想を覚えました。

よくある世間一般のBL通説ならば、

いつも笑顔の大和はいわゆるワンコ系で、

”光臣、好き好き♪” で押してく攻めと推測するのが妥当なところ。

で、ツン系の光臣が絆され受けでというやつ。

しかし意外や意外。光臣からの先手キス。

寝たふりしてたけどそのキスに気づいてた大和。

これで一気に心をぎゅん!と鷲掴みされました。

いつもの感じとちょっとちゃうやん~と(^^)

 

”お前が好きだ” と告げちゃった光臣に、

”もう少し待ってね…” と言った大和。

その心は、愛されることを知らずに育った自分に、

誰かを愛することができるのか?という不安があったから。

うまく愛せなかったら…って。

そして ”おう…” と素っ気ないながらも柔らかい光臣の返事に、

”そんなん大丈夫だ、問題ない

って思いが含まれていたように感じました(^^)

 

こちら、なんと続編ございます。

えぐえぐとボロ泣きしてしまった続編が。

そないに泣くとこあった?と言われますとあれですが…(^^;

嗚咽とまではいかないまでも、

いつか読んだ『ワンルームエンジェル』並みに泣いてしまいました。

ワンルームエンジェル』は少し孤独感が漂う感じでしたが、

今作の『リスタートは~』は家族や友達の温かさに胸打たれる感じ。

♪一人じゃないって~素敵なことね~なんて歌詞ありましたけど、

喜びも悲しみも分かち合える人がいることの素晴らしさ。

ほんとになんて素敵なことなんだろうと思いました。

 

年の瀬迫る12月、

「家族を大切にしよう」という思いにさせてくれる良作に出会えました。

どうせすぐに些細なことでムカついたりしてしまうんだろうけども、

いやいや優しくしようと、ちょっとは心にブレーキがかかるはず(^^;