どうして俺を恨まないんだ どうして俺のことが好きなんだ
お前の気持ちを知りながら気付かないふりをしている。
新進気鋭の写真家である清澄(きよすみ)は、亡き親友の弟のひばりと
２人で暮らしている。仕事仲間でもあった親友の死に責任を感じ、
ひばりを引き取ったのだ。唯一の肉親を失ったひばりの「家族」に
なることを誓った清澄。お前の大切なひとを奪ったのは俺だから。
しかし、ひばりはそんな清澄に言えない想いを抱えていて…。
高校生のひばりと後見人の清澄。
とても美しい２人が織りなす、切なくもやさしい物語。
ひばりにはお兄ちゃんがいました。
しかし２年前にバイク事故でその兄・みさごを亡くしています。
両親がおらず施設で育った兄弟２人。
みさごを亡くし、一人ぼっちになったひばりを引き取ったのは、
みさごの親友である清澄。
清澄はみさごに話しかけます。
”どうか心配しないでほしい。ひばりはちゃんと俺が……”
夢うつつの清澄にそっと唇を寄せるひばり。
俺はひばりの「家族」にならなきゃいけない。
お前から大事なお兄ちゃんを奪ったのは俺だから。
なのに、どうして俺を恨まない。
ひばり、どうしてお前は俺のことが好きなんだ。
清澄にキスをして立ち去るひばりの足音を聞きながら空を見つめ、
心の中でひばりに、そして自分に問いかける清澄。
第１話のこのシーンが素晴らしく美しい。
美しいのに２人の心は曇天なんです。
笑顔がひとつもない。
２人の幸せな着地点を求めつつ、
重苦しさを我慢しながら読み進めていくストーリー展開です。
まず、ミナヅキアキラ先生初読み作家さんでしたが、
とても綺麗な絵を描かれる方です。
ひばりの吸い込まれるような黒い瞳が印象的。
ふと『美しい彼』の八木勇征さんに似てるな…なんて(^^)
あと名前ね。「ひばり」と「みさご」。
鳥の名前ですよね。素敵だな～と思いました。
そして「清澄」。清らかに澄みわたっているさま。
ひばりとみさご兄弟が、
清澄の周りを自由に飛び回っている様を想像します。
第１話からひばりと清澄が、
お互いに対して想いを寄せているだろうことがわかります。
半分起きてるのにひばりのキスを拒まない清澄を見ても、
ひばりの一方的な「好き」じゃないことがわかる。
作中でも清澄自身が言ってました。
”オトナのずるさ” を出してるんだと。
本当は爆発しそうなぐらいひばりへの想いが溢れているのに、
手を伸ばしてすぐにでも抱きしめたいと思っているのに、
自分からは言いだすことができない。
でも、ひばりが一言 ”好きだ” と言ってくれたら、
俺はそれを受け入れるよと、完全に待ち状態の受身。
「好き」の責任逃れじゃないけど、
一途なひばりの気持ちに自分も乗っかる的な。
なぜ２人がお互いにブレーキをかけているかというと、
２人共「罪」を背負っていると感じているから。
清澄は２年前のその日。
仕事の手伝いをして欲しいとみさごを自宅に呼び寄せました。
雪が降る深夜、
バイクを飛ばし清澄の元に来る途中、
スリップ事故で命を落としたみさご。
俺がひばりのたった一人の大事な家族を奪ってしまったという罪。
一方のひばりも、
大好きな清澄といつも一緒にいるみさごが羨ましいと嫉妬してた。
清澄からの呼び出しがあったその日も、
嬉しそうに出掛けるみさごに苛立ち、
”ずっと清澄のところにいたらいいじゃん！” と吐き捨てるように
投げかけた言葉がみさごとの最後の会話になった。
ひばりの「後悔」という罪。
この罪のせいで２人は進めなくなっていたんです。
なかなか悶々とした苦しい展開が続く中、
清澄が倒れて病院に運び込まれます。
そして駆けつけたひばりは清澄に抱きつきながら泣くんです。
”また大事なことを何も言えないまま会えなくなるんじゃ……” って(T^T)
ようやく心の底にあった「後悔」を素直にさらすことができました。
同じく清澄も、
”ある日突然会えなくなって、
伝えられなくなる怖さを俺たちはもう十分知ってる”
そうひばりに告げて、
”ずっと一緒にいよう” と、ひばりを抱きしめることができました。
泣きました(T^T)
ひばりがポロポロと涙を流す姿に泣きましたし、
清澄の言葉も胸にきました。
”今この時を大事にしようぜ” みたいなね。
そして、泣いた後の２人の甘～いやつよ♪
なんか綺麗だからエロって言いづらい感が…(笑)
しかし、ひばりの真っ裸の潔さがとても良かった(^^)
先日の『青とジェント』の京一さんもそうでしたが、
清澄もね、ちゃんとひばりの卒業を待つんです。
Ｈは高校を卒業してから！って、
２人ともコンプライアンスしっかりしてます。
