しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『言ノ葉ノ花(コミック版) 上・下』(作者:三池ろむこ/砂原糖子)

  言ノ葉ノ花言ノ葉ノ花 

【上巻】
ある日突然、人の心の「声」が聞こえるようになった余村(よむら)。
そのせいで人間不信に陥り、世間と距離を置いて生きていた。
だが同僚・長谷部(はせべ)の「好き」という、自分へ向けられた
心の声を聞いてしまい……!?

【下巻】
長谷部の心の「声」を聞き、自分への想いを知ってしまった余村。
彼を知るうちに惹かれていき、長谷部ならば自分を受け止めてく
れるのではと期待し始める…。しかし二人の間にある事件が起こり!?

 

”辛い…” のひと言です。

BLとかハッピーエンドとかの前に、

読み進めていくのがただただ辛くて苦しかったです。

 

あるクリスマスの夜に突然、

人の心の声が聞こえるようになってしまった主人公・余村さん。

聞きたくもない赤の他人の心の声、

職場の同僚の声、友達の声、恋人の声…。

それは、

知りたくなかった本音の声、闇の声、黒くて薄汚い声でした。

どんなに耳を塞いでも遠く離れても聞こえてくるその声たちに、

余村さんの心と身体は限界を越え、

仕事を辞め、恋人とも別れ、家に引きこもるようになりました。

 

例えばこれがもし、わたしの身に起こってしまったら…?

気持ちの安まりや心の平穏が一切ない世界に投げ出されたら、

わたしは生きて行けるのか…と。

終始そんなことを思って考えて、重く、暗くなりました。

 

心の中まで清い人ってこの世にいるんだろうか?

「妬み」「嫉み」「歪み」「悪意」「損得」「エロ」

そんな感情が一切ない人っているんだろうか?

たぶん赤ちゃんぐらいじゃないかしら、

清いモノしか入ってない心の持ち主って。

自分自身がそういうのを思いっ切り考える人間だから、

どちらかと言えば薄汚いマイナス本音思考の人間だから、

こんなことが起きたら、心、ぶっ壊れてしまう…。

 

余村さんはよく潰れないなと思いました。

プロポーズしようとしていた恋人の心の声が、

”主婦なんかなりたくないけど、

コイツなら金持ってるし楽な生活できるか” だし、

信頼していた職場の同僚の心の声が、

”コイツさえいなけりゃ俺の仕事が評価されるのに” だし。

一旦は辛くて逃げ出して引きこもるんですけど、

働かないと生きてけないから、

家電量販店でアルバイト始めるんです。

そして24時間365日、

垂れ流される周囲の「心の声」に晒される。

それに圧し潰されない余村さんの精神力、神か!?

 

余村さんは、

その家電量販店の社員である長谷部さんと出会います。

この長谷部さんが余村さんの心の支えになります。

長谷部さんから聞こえる声は ”余村さん、好きです” の一択。

聞けども聞けども余村さんを想う ”好きです” の真っ直ぐな声。

長谷部さんも神でしょうか?(^^;

 

何にせよ嘘偽りのないこの声に、

どれほど余村さんが救われたことか!

後に、余村さんが人の心の声が聞こえることを打ち明けても、

長谷部さんはそれでも傍に居たいと言った。

好きな人に自分のマイナス感情がダダ漏れなのは、

いずれ嫌われるんじゃないかと思ってとても怖いけど、

でも、それでも、それ以上に余村さんのことが好きだから!

 

”2人の想いが通じ合ったその時!心の声がパタリと止んだ…”

なんて展開を期待したりもしましたが、

ちゃんと現実を見せてくれました。

特別美しいものはないこの世界の声と

共存していくしかないことを受け入れる余村さん。

そんな余村さんが寄り添えるようにそっと肩を貸す長谷部さん。

 

”今日は見えなくても、

厚い雲の向こうには綺麗に輝く星がちゃんと存在するんだ”

 

世間が醜い声に溢れようとも、

長谷部さんというきらりと輝くひとつの希望があれば、

明日の晴れを楽しみに生きていける。

好きな人の存在はこんなに余村さんを強くするんだなと思う最後でした。

 

ネタバレになりますが、

今作には『言ノ葉ノ星』という続編が出ていまして、

余村さんと長谷部さんが恋人同士になって、

順調に交際を続けている物語となっているんですが、

幸せな日々を過ごしていたある朝突然に、

余村さんは心の声が聞こえなくなるんです。

あんなに疎んでいた心の声が聞こえる力がなくなった。

万々歳じゃないの!と拍手喝采かと思いきや、

聞こえなくなったことで不安に苛まれる余村さんがいるんです。

 

手に取るようにわかっていた誰しもの声が、

長谷部さんの声が、今、まったく聞こえない…。

みんなが何を考えているのかわからなくて、

疑心暗鬼になる余村さんと、

またもやそれを支える長谷部さんが描かれています。

ちゃんとハッピーエンドになっているようですが、

少しチラ読みしただけで、続編は買っておりません。

チラ読みだけで、

続編もかなり重そうな流れになっているのがわかったので、

わたしにはハピエンまで無事に読了することは

困難そうだ思うに至りました(^^;

 

時が経って、歳を重ねた頃に読めば、

また何か違った思いを感じるのかもわかりませんね。

とにかく今の時点の感想としては、

”辛い…” のひと言でございます(^^;

 

 

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