しろくまBL部

腐女子のBL覚書

『Two sides of the same coin 上・下』(作者:西本ろう)

  

ドM父の不倫現場を目撃してしまった大学生の悠二(ゆうじ)。
見て見ぬ振りでその場を去ろうとするが、美しき銀髪のボクサー・コウに
ぶつかってしまう。そのお詫びとして、コウに唇を奪われる悠二。
もう二度と会うこともないと思っていたが…。
コウとホテルに二人きり、「俺、いてぇーと勃っちまうんだ」と言われ…。
強さと弱さを抱えるコウにどうしようもなく惹かれていく悠二。
彼は父の〇〇なのに…。

 

西本ろう先生の圧倒的画力にノックアウト!

先生の描く人物の質感・肉感のエロさよ。

生々しさすら漂う肉体の弾力性や滑らかさ、柔らかさ、温かさ。

さらには血、汗、涙、ヨダレに鼻水にチ〇コ液。

これら液体類のリアルな汚らしさと清らかさが同居する様。

まさに、造りものじゃない生身の人間がそこにいる感じ。

気圧されるぐらいの迫力で迫りくる力強い絵に身も心もやられました。

そして、ずっしりと重厚なストーリー展開。

軽々しく ”片手間に読む” なんてことができないあたりが、

さすが西本ろう作品!と言わざるを得ません。

しかも今作は上・下本と、かなりの読み応え。

ますます読むのに気合要りましたし、

内容的にも下巻はまた後日…なんてできないヤツで、

上下一気読み強く推奨!な作品でした。

 

タイトルの『Two sides of the same coin』は、

訳すと「表裏一体」という諺になります。

”表と裏の関係のように、密接につながり切り離せないこと”

という意味で、

まさに、主人公・悠二とコウのニコイチの関係を表わしています。

さっそく激しくネタバレです↓↓↓

 

実は2人は腹違いの兄弟。

警視庁の超エリート父さんがよそで浮気してました。

仕事仕事で家を空け、

その癖自分の息子のデキが悪いと母さんを責める父。

これ以上母さんがなじられないように、そして、

そんな父さんに少しでも認めてもらえるよう懸命に頑張る悠二ですが、

ある日の帰り、父さんが車の中で男とキスをしている姿を目撃します。

”何してんだ、このクソ親父” と。

こんなヤツのために頑張っている自分に大きな虚しさを覚えた悠二です。

 

そしてなんと、父さんとキスをしていたこの男。

彼こそ腹違いの兄である航介(コウ)でした。

コウは最初から計画をしていたんです。

母さんと不倫をした上、

自分が生まれても認知することもなく、さらには母さんを痛めつけ、

玩具のようにぞんざいに扱ったこのクソ親父と、

そんなヤツの庇護の元でぬくぬくと幸せに育つ悠二に復讐をしてやると。

 

偶然を装い出会ったコウと悠二。

身体を重ねるも、悠二はクソ親父と似て非なるもので、

たくさんの優しさとバカが付くほどの気遣いに満ち溢れる人間でした。

あいつみたくクソだったらよかったのに…。

会えば会うほど、身体を重ねれば重ねるほど ”好き” が積み重なるコウ。

やがて悠二にその計画が知られることになり、

コウは涙ながらに悠二に背を向け走り去ります。

 

悠二はコウの生い立ちを知ることになります。

父さんが浮気相手であるコウの母親を痛めつけ、

それによって心を病んだ彼女が記憶障害を起こして

コウのことをまったく覚えていない現状であること。

そんな母親の入院費用を得るために、コウが父さんに抱かれていたこと。

その息子である悠二を傷つけてやりたい!と思い、

コウが自分に近づいたこと。でも、好きになってしまったこと。

そんなことまったく知らずに、

出会った時から悠二はコウに特別な感情を抱いていました。

兄弟だとわかった今、その気持ちはさらに強くなり、

走り去ったコウを懸命に探し求めます。

そして、小さく縮こまり膝を抱えて震えるコウを見つけた時、

”もう絶対にひとりにはしないから” と告げました。

 

そのすぐ後で、さっそく2人は公衆便所でHをします。

汁気たっぷりのネトネトなH。

で、Hしながらワザとコウを ”兄さん兄さん” 連呼する悠二が、

可愛さ余ってエロさ100倍でした。

まさにこれ見よがしなエロでスゲかったです(^^)

 

近親相姦モノは地雷なんですが、これは全然イケました。

腹違いだからかな?全然兄弟っぽくない2人で、

おまけに兄弟ってわかった後の方が俄然可愛くて良い感じでした。

クソ親父の元を離れて、

2人で生活している様子を先生があとがきで付け足して下さってて、

ああ~ちゃんと暮らしてるんだな~ってわかって微笑ましくなりました(^^)

 

かなり重い空気感が漂うストーリーでしたが、

先生のあとがきで、

全部がプラスに変わるという稀有な作品でございました。

芸術の域に達するような画力に魅せられ、

いつの間にか物語にも魅せられてしまっているという。

この先生ならば、

地雷でも読みたいと思えるほどとてもおもしろい作品でした。